『四日間の不思議』 A.A.ミルン

 

 

A.A.ミルンは、「卓越したユーモリストであり、劇作家、詩人、エッセイスト」で、『クマのプーさん』の作者だ。
そのミルンが二作のミステリを書いている。それが、『赤い館の秘密』と、あと、この『四日間の秘密』だ。
以前読んだ『赤い館の秘密』が、(殺人事件なのに)のんびりと牧歌的で、あと味もよかったから、こんなのをもっと読みたい、と思っていたところだったのだ。


18歳のジェニーは、何年も会っていない叔母がなくなっているのを見つける。どうやら殺されたようだ。
第一発見者になってしまったジェニーだけれど、無意識のうちに、凶器らしきものから、自分のハンカチ(名前入り)で血をぬぐい(椅子の上に放置して)、その後、はっと我に返り、窓から飛び出し(窓は開けっぱなし)、花壇に飛び降りた(足あとを残した)。
そして、逃亡するのである。


ジェニーの逃亡劇が始まるが、これがなんとものんびりしていて、まるで、おしゃれなピクニックをしているようなイメージである。
ジェニーの逃亡中、本人の知らないうちに、犯人と疑われたり、犯人に連れ去られた被害者と思われたり……。
その間にも、ジェニーの逃亡に手を貸す人、それと知らずに巻き込まれる人、などが次々現れるが、誰もかれもが、なんとも呑気だ。そのうえ、ロマンスの花なども咲き始めているし。
こんなことでいいのだろうか。亡くなった人が気の毒になる。
そして、犯人はどこにいるのだろう。
物語に登場する人々は、誰もかれもちっとも犯人らしくない……というのは、ミステリの常道なのでしょうけれど、度を越えて可愛い人たちの集まりなのだ。まさか、これまでに出てこなかった人が犯人、ということはないだろうし……さて。


ミステリもよいが、それよりも主人公たちと一緒にちょっとゆっくりめの休日を楽しむつもりで読むのだ。
ミルンのもう一つのミステリ『赤い館の秘密』に、さらに輪をかけて(殺人事件を扱っているにもかかわらず)牧歌的で呑気だった。もちろん、あと味も……辟易するくらい、良し!なのだった。