12月の読書

12月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2307

生きるか死ぬかの町長選挙 (創元推理文庫)生きるか死ぬかの町長選挙 (創元推理文庫)感想
最高の三魔女のチームプレイに笑いに笑ったが、フォーチュンが元の仕事に戻らなければならない日がやがて来るのが寂しい。戻したくない。私はこの町のフォーチュンが好きだ。シンフルの印象も少しずつ変わってきた。ここ本当に静かで退屈な田舎町なのだろうか。見た目通りではない(別の顔をもつ)人々の住む町が不気味に思える時がある。
読了日:12月23日 著者:ジャナ・デリオン
銀河の果ての落とし穴銀河の果ての落とし穴感想
「ユーモアとは耐えがたい現実とつきあう手段なのです。抗議する手段でもあり、ときには人間の尊厳を守る手段でもあります」あとがきで紹介されていた作者の言葉。ブラックな物語もあったし、救いようのなさに言葉を失ったりもした。それなのに読後、そこはかとない素朴な優しさのようなもの、そこはかとない清々しさを感じている。
読了日:12月21日 著者:エトガル・ケレット
みすず 2019年 12 月号 [雑誌]みすず 2019年 12 月号 [雑誌]感想
連載『戦争と児童文学』第10回 「転がり落ちていくオレンジと希望 『戦場のオレンジ』~憎しみのなかを走り抜ける少女」(繁内理恵)を読む。繁内さんの案内で、物語の、それぞれの場面の向こう側にあるはずの事情や思いが見えてくる。ライラ先生と何者だったのか、敵味方のなかで「言葉」がどんな役割を果たさせられていたか。
読了日:12月19日 著者: 
戦場のオレンジ戦場のオレンジ感想
内戦の町の人々。相手に対して細やかで温かい思いを寄せることができるのに、自分とは違う集団に属していることがわかった途端に、自分からも相手からも細やかな表情が消えてしまう。ただ、集団のレッテルにしか見えなくなってしまう。ライラ先生の「大人になっても、人をにくんじゃだめよ」という言葉が祈りのように子どもたちを包む。
読了日:12月18日 著者:エリザベス レアード
単純な生活 (P+D BOOKS)単純な生活 (P+D BOOKS)感想
阿部昭さんの日々は、単純な生活の夢をポケットにつっこんで、煩雑な日々を乗り切っているような感じだ。単純な生活はなかなかできそうにないけれど、ポケットの中ににそれを持っていると知っていたら、日々を朗らかに過ごすための小さなお守りになりそうだ。
読了日:12月15日 著者:阿部 昭
ネギをうえた人―朝鮮民話選 (岩波少年文庫)ネギをうえた人―朝鮮民話選 (岩波少年文庫)感想
韓国のお話をこんなにまとめて読んだのは初めてだ。恐ろしい動物の筆頭としてのトラや、妖術を使って人にイタズラを仕掛けるトクカビ。日本のお話にはまず出てこない役者たちに、わくわくする。「~の始まり」のお話は、どこの民話にも多くあると思うけれど、表題作でもある『ネギをうえた人』は奇抜さで群を抜く。
読了日:12月12日 著者: 
翻訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK翻訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK感想
五年分の冊フリーペーパー「BOOK MARK」1号から12号までがまとまって、単行本になった。大きく厚くなった宝の地図に、ほくほくしている。わたしが一番気に入っているのは7.ホラー特集。苦手のホラーだが「そんなに」恐くなくて、恐さ以外の「何か」が、余韻のように心に残るようなホラーに出会えそうだ。
読了日:12月10日 著者:金原 瑞人,三辺 律子
せんせん感想
すー、すー、くるくる…文字のない絵本の画面のなかから、静かでリズミカルなエッジが立てる音楽が聞こえてくるよう。紙は氷になり、氷は湖になり、スケートを楽しむ子らの歓声が聞こえる。岸辺には裸樹が並び、奥へ、奥へ。はるかな空をV字編隊で鳥たちが行く。そして、すべては、また絵の中へ。気持ちよく絵の中のおさまっている。
読了日:12月06日 著者:スージー・リー
イル・ポスティーノ (徳間文庫)イル・ポスティーノ (徳間文庫)感想
ネルーダに郵便を配達するマルコは怠け者で軽い男だったが、一途な男でもあった。マルコが、村に帰れないネルーダのために(仕事をサボって)ソニーのテープレコーダで、次々に録音した村の音が好き。黒いフォードの男が、笑うセールスマンみたいで不気味で怖かった。
読了日:12月05日 著者:アントニオ スカルメタ
木菟燈籠 (講談社文芸文庫)木菟燈籠 (講談社文芸文庫)感想
よく知っている人のつもりでもひょこっと知らない顔が見えて、どきっとしたり、ときどきはかわいらしいものだと思ったり。それから、友人知人たちの訃報が多くあった。静かに親しい人の死を自分の心の内に沈め、自分の他の部分(生)に混ぜ合わせながら、ゆるゆると生きていく、というイメージだ。
読了日:12月03日 著者:小沼 丹
ある一生 (新潮クレスト・ブックス)ある一生 (新潮クレスト・ブックス)感想
『訳者あとがき』によれば「著者ゼーターラーは、アンドレアス・エッガーという男の人生を『木を彫るように』創り出した」そうだ。木を彫るという言葉は、この人になんと相応しいことか。彫り出された人の、その木の手触りを確かめるように読んでいた。満ち足りた読書だった。
読了日:12月01日 著者:ローベルト ゼーターラー

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