『Wonderful Story(ワンダフルストーリー)』伊坂幸犬郎、犬崎梢、木下半犬、横関犬、貫井ドッグ郎

Wonderful Story(ワンダフルストーリー) (PHP文芸文庫)

本に記された作者名は、伊坂幸犬郎、犬崎梢、木下半犬、横関犬、貫井ドッグ郎。
あれ？と思ったけれど、ほんとうにそのように書いてある。
この本は、(名前の一部が）犬になった、あるいは犬になりやすい名前（！）をもった現代の著名作家たちによる、犬絡みの作品を寄せたアンソロジーなのだ。
なんて楽しい企画だろう。

それぞれ個性的な作品だけれど、人間の物語に、何も知らずに素直に巻き込まれてしまう犬たちが、不憫であったり、愛しかったりする。

好きなのは、『パピーウォーカー』（横関犬）
人間と話すことがめちゃくちゃ苦手だけれど、犬との会話が得意な盲導犬訓練士と、若者らしくない駄洒落連発の研修生との、コンビがとってもいい。何より、盲導犬のけなげさが心に残る。
これ、連作になればいいのになあ。

連作になればいいのに（この一作だけではあまりに惜しいじゃないか）と思う作品はほかにもあるけれど、その一つが『イヌゲンソウゴ』（伊坂幸犬郎）
犬たちのネットワークがよいのだ。陽気な犬たちだって、きっと地球くらいはまわしちゃう。このチームが活躍する作品、もっと読んでみたい。

犬のネットワークといえば、『犬は見ている』（貫井ドッグ郎）の、あるんだかないんだかわからないそのネットワークは、不気味で、じんわりと怖い。

大人の事情に翻弄される少年の、犬を飼いたい気持ちが染み入るような『海に吠える』（犬崎梢）もよかった。伝説の源義経の犬、若丸の伝説が生きている。

『バター好きのヘミングウェイ』（木下半犬）は、不快なことこのうえなかったが、ヘミングウェイがヘミちゃんに変わったところで、くすっと笑えた。

楽しい企画の仕掛人による解説も、楽しかった。
もし、第二弾があるなら、ポチ新一の作品も…とのこと。第二弾、あったらいいな。