2015年7月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:2648ページ
深呼吸の必要の感想
「どこかへ何かをしにゆくことはできても、歩くことをたのしむために歩くこと。それがなかなかにできない」(『散歩』)私は、この本のなかを散歩したかった。散歩だったかな。「本は伝言版。言葉は一人から一人への伝言」(あとがき)この「伝言版」を手に取るまでに時間がかかったから、伝言を読むのもゆっくり。
読了日:7月30日 著者:長田弘
こころ朗らなれ、誰もみな (柴田元幸翻訳叢書)の感想
いかれた人びとの悲しさが心に残る。悲しくて可笑しくて、もうちょっとで美しさに通じるような気がする。本当は苦しい。一人の苦しみが可笑しさや悲しさになり、美しさに繋がっていくのは、残酷だ。『心臓の二つある大きな川 第一部・第二部』と『最後の原野』が印象に残る。自然界に張り巡らされた見えない緊迫した糸が束の間の美しい時間をからめとろうとしているようだ。
読了日:7月27日 著者:アーネスト・ヘミングウェイ
マーリー―世界一おバカな犬が教えてくれたことの感想
この本をどのくらい読み進めたころだろう、「世界一おバカな」という言葉が最大級の賞賛だと気がついたのは。いっぱい笑って泣いて、最晩年の日々でさえも、ひたすらに生きようとするマーリーの姿に打たれた。家族とともにいることを喜ぶ姿に打たれた。いつか私たちも(家族ともども)、バカ犬クラブに入れてもらうことを目標に、これからも丁々発止とやろうね、うちの子犬。
読了日:7月24日 著者:ジョングローガン
想い出のエドワード・トマス―最後の4年間の感想
詩人の評伝であると同時に、ファージョンと彼女を巡る人びとの遅めの青春記のようでもあり、興味深い。エドワードが軍服を着ることを決心するまで(そして戦死に至る)の苦しみを知り、このような決心をせざるを得ないところまで人を追い詰めていった時代に、社会に、怒りと恐怖を感じている。
読了日:7月19日 著者:エリナーファージョン
おちゃのじかんにきたとらの感想
びっくりだけれど「おちゃのじかんにきた」大切なお客になってしまう、このおうちのもてなし方が素敵。豪快に平らげていくトラの食欲にわくわく。女の子がトラの体やしっぽに頬ずりする表情にうっとり。温かい体温が伝わってくる。女の子のしぐさがかわいい。服を着替えさせてもらう様子がたまらん。絵本まるごとにすりすりしたくなる愛おしさ。
読了日:7月14日 著者:ジュディスカー
庭をつくろう!の感想
荒れた庭を掘り返し、病気のりんごの木を蘇らせる。芝生、草花、野菜、木々。春夏秋冬。朝昼晩。友人、小鳥、たき火にクロス。お邪魔なはずの雑草までが大切なお客様に思える。庭をつくることは、その一瞬一瞬を庭と一緒に楽しむこと、生き物たちみんなと一緒に呼吸をするようなものかな、声を合わせて歌うようなものかな、と思う。良い匂いをいっぱい胸に吸い込む。
読了日:7月14日 著者:ゲルダミューラー
オン・ザ・ライン (小学館文庫)の感想
カラス坊と貴之は似ている。久しぶりに『オン・ザ・ライン』を読んでそう思った。どん底を体験している者が、自分と向かいあう用意をするための場所(形のあるものでも、ないものでも)を持っていられたらいいな、と思う。それまで待ってやれる周りであったらいいな、と思っている。単行本も文庫本も表紙は青空。でも、違う青だった。二冊揃って物語の進行を表しているようだ。
読了日:7月12日 著者:朽木祥
ただいまラボの感想
描きづらかったであろう獣医学・動物医療のネガティブなテーマにも、この作品は誠実に向き合おうとしたことに好感をもった。答えは出ないのだ。どんな合理的な説明が成り立つとしても答えにはならない。それでも彼らは悩み苦しみつつ答えを探し続けるだろう。彼らの誠実さが、いつか何かの扉を開くことになるように、と願う。
読了日:7月9日 著者:片川優子
カトリーヌとパパの感想
物語のすべてが、少し紗がかかったようなぼやけた色に見える。だってめがねをはずして見ている世界だから。もう少ししたらめがねをかけなくては、ちゃんと見なくては。いやいや、やめておこう。だって、これは過ぎてしまった想い出。このまま大切に取っておきたい世界だから。
読了日:7月6日 著者:パトリック・モディアノ
花野に眠る (秋葉図書館の四季)の感想
10年を経て出会った「つづき」の本。ミステリも面白いが、「ああ、図書館に浸りたい」と思わずにはいられない雰囲気もそっくり引き継がれていたのが嬉しい。読みたい本をネットで探し、予約して、忙しく図書館には受け取りに行くだけの今の私。久々にゆっくりと図書館で本を読みたくなった。棚の間を時間を忘れて歩きまわりたい、と思った。
読了日:7月5日 著者:森谷明子
明け方のホルン―西部戦線と英国詩人 (大人の本棚)の感想
第一次大戦に従軍した七人のマイナー詩人たち。「祖国のために戦い死ぬことは甘美で名誉あることだ」という言葉の大嘘を見抜き、自らは手を汚さない政治家たちの欺瞞に強く憤る詩人たちの研ぎ澄まされた言葉。詩人たちは従軍し、自らの十字勲章を投げ捨て、戦死し、戦後自らの戦争詩を否定し、精神を病んだ。ことに、田園詩人ブランデンが歌う戦場としての田園が怖ろしかった。
読了日:7月2日 著者:草光俊雄
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