7月の読書

7月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2077

容疑者 (創元推理文庫)容疑者 (創元推理文庫)感想
犬が出てこなくても、ミステリとして充分おもしろい、と思うが、マギーとスコットのコンビのおかげで、この物語は、おもしろいミステリ以上の物語になった。単体の犬・人、ではなく、二人になったとき、何かが生まれ、始まる。マギーとスコット二人のパートナーシップが、多くの素敵な見せ場をつくり、読み終えるまでには二人のことが名残惜しくてたまらなくなる。


読了日:07月22日 著者:ロバート・クレイス
プラテーロとわたしプラテーロとわたし感想
プラテーロは、ふわふわの毛のロバ。お月さまの銀の色をしている。「プラテーロ」呼べば、鈴の音にも似た足取りで、かけよってくる。時々へそをまげる。ふてくされたようにのろのろ歩く。プラテーロの存在のすべてが、どこか遥かなところからやってくる、詩人への(自分への)穏やかで明るい共感のようだ。小さなロバの瞳の中で、「ありふれた風景」が「えいえん」へと変わる。


読了日:07月19日 著者:ファン・ラモン ヒメネス
レイミー・ナイチンゲールレイミー・ナイチンゲール感想
少女たちは、ほんとうは「取り戻したい」と一途に思っていたのだ。不覚にも失った大切なものは(それが大切であればあるほど)大抵取り戻せないものなのだ。でも、それをわかってどうするのだろう。少女たちの周りの大人たちの萎れっぱなし具合を思うと、ため息がでる。大人たちを飛び越えていく(であろう)娘たちに乾杯したい。遠く遠く飛んで行きなさいね。


読了日:07月18日 著者:ケイト・ディカミロ
子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から感想
「政治が変わると社会がどう変わるかは、最も低い場所を見るとよくわかる」と著者。英国の地べたは日本の地べたに繋がる。どんどん悪くなる地べたの人びと・子どもの暮らし。綱引きの綱を持って踏ん張ろうとする人たちがずるずると引き摺られていく様を思い浮かべるが、落ちても落ちてもなお、落ちきる前に支えようとする人たちの不屈の踏ん張りが見えるような気がする。


読了日:07月14日 著者:ブレイディ みかこ
ヒルベルという子がいた (偕成社文庫)ヒルベルという子がいた (偕成社文庫)感想
ヒルベルにいったい何ができるのか、などということをわれわれは思いなやむ必要などないのである。ヒルベルが、ただそこにいてくれるということ、そのことが計り知れない意味をわれわれにもたらすのである」との河合隼雄さんの言葉が尊い。大人たちの「発作」という言葉に、相手への無関心が滲む。ライオンの話、おうちの話、お日さまが作られる国の話、忘れられない。
読了日:07月13日 著者:ペーター ヘルトリング
ちいさな国でちいさな国で感想
人が人でなくなっていくそのはじまりはいったいどこにあるのだろうか・・・物心つく前の子どものころに始まっていたのだろうか。「・・・大切な秘密の庭を丹精して手入れするんですよ。本を読み、人と出会い、恋をして豊かになるんですよ・・・」ギャビーの愛するちいさな国は、この美しい言葉が現実離れしていると感じさせるようになってしまっていた。



読了日:07月09日 著者:ガエル・ファイユ,Gaël Faye
はしっこに、馬といる ウマと話そう?はしっこに、馬といる ウマと話そう?感想
「『すきま』があるっていいものだなあ」と著者はいう。そして、読んでいるわたしも「いいなあ」と思う。それは、きっとウマとヒトの関係だけではないかもしれない。他の動物とも、ヒトとヒトとの関係でも。ページのあいだに、ウマが遊んでいる。絵にも、絵と文章のあいだにも、すきまがある。この本の「すきま」から、与那国島のよい風が吹いてくる。気もちいいな。



読了日:07月05日 著者:河田 桟
馬語手帖―ウマと話そう馬語手帖―ウマと話そう感想
そうやって、遠いところから、少しずつ少しずつ近づいていく。少しずつ少しずつがいいな。

読了日:07月05日 著者:河田 桟
ドームがたり (未来への記憶)ドームがたり (未来への記憶)感想
原爆ドームが自分の歴史を語る。原爆を落とされた日の事は、比較的さらりと書かれている。それより後の時代を描くスズキコージの絵の恐ろしさ。優しく静かな言葉は、余計に絵の怖さを引き立てる。見えないたくさんの「つぶつぶ…」が、世界のあちらにこちらにも降り、かけらが刺さり続けている。今も小鳥は巣をつくり、ドームが生まれた頃と何も変わらないように見えるのに。
読了日:07月04日 著者:アーサー・ビナード

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