7月の読書

2013年7月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:5214ページ

ロバータさあ歩きましょう (偕成社文庫 4029)ロバータさあ歩きましょう (偕成社文庫 4029)感想
手に入らない物と手持ちの物と比べるのではなくて、今の状態を受け入れ、そこから力を尽くして動き出そうとするたづさんの姿勢と、寄り添うロバータの健気さに打たれる。二人が、素晴らしいパートナーになっていく姿を夢中で読んだ。一緒に歩くロバータとたづさんは、共に凛とした気品があって美しい。
読了日:7月30日 著者:佐々木 たづ
新潮 2013年 02月号 [雑誌]新潮 2013年 02月号 [雑誌]感想
長編評伝『石井桃子と戦争』(尾崎真理子)戦争が激しくなる後篇。石井桃子さん自身が、あえて語らなかった(語れなかった)ことを、さらりと読んでしまって、本当によいのだろうか、申し訳ないような気もする。のちの手紙の「ウソでかためた世界がいやになり…」の文面。胸を突かれるようだった。
読了日:7月28日 著者:
新潮 2013年 01月号 [雑誌]新潮 2013年 01月号 [雑誌]感想
長編評伝『石井桃子と戦争』(尾崎真理子)前篇。戦前〜開戦直後。絢爛たる名士の名前が続く。軽やかに足を踏み出していく若い才媛の姿が目に浮かぶよう。「プーが降りてきた」「魔法にかかった」と話す、プーとの驚きの出会いが印象的で美しかった。吉野・太宰へのユーモアある辛辣な人物評も印象的。
読了日:7月28日 著者:
ふるさとは、夏 (福音館文庫 物語)ふるさとは、夏 (福音館文庫 物語)感想
見えても見えなくてもそこにいる「存在」を心の目でとらえ(と改まって言うこともおかしいくらい)普通にともに暮らしていく人々がいる。そのことさえ私は、見えなかった。その当たり前さに気がついたとき、神々が一斉に笑ったような気がした。さがしものは、もうすぐそこにある・・・
読了日:7月27日 著者:芝田 勝茂
いるの いないの (怪談えほん3)いるの いないの (怪談えほん3)感想
天地と周囲の広がり、空気の匂いに目眩がする。読後、図書館バッグに封印したんだけど、あの中に絶対何かいる。見るんじゃない、と思うけど、ついつい気になる。わああん。早いところ図書館に返しちゃうんだ。
読了日:7月26日 著者:京極 夏彦
芸術新潮 2013年 05月号 [雑誌]芸術新潮 2013年 05月号 [雑誌]感想
貴婦人と一角獣》模様の歴史や謎、中世貴族の衣食住の話も興味深いが、なんといってもタピスリーを遠近豊富な写真でじっくり見られるのが嬉しい。細部までこだわった繊細な模様。華奢な乙女の手指が思いのほかコロンと丸いことや、当時の髪型なのか、あのチョンマゲが不思議でおもしろい。
読了日:7月25日 著者:
貴婦人と一角獣 (白水Uブックス181)貴婦人と一角獣 (白水Uブックス181)感想
父や夫の思惑だけで、どこにでも転がされる女たち哀れ。で、あるはずなのに、抑えつけられた女たちはただで押さえつけられてはいない。それに比べれば、男たちの単細胞ぶりは笑える。舞台を浚うピエロのような伊達男。読みながら何度も眺めた図版。最後に、そういう見方もあったのか、と唸る。
読了日:7月23日 著者:トレイシー シュヴァリエ
山びこ学校 (岩波文庫)山びこ学校 (岩波文庫)感想
読んでいて涙がこぼれた。涙なんて、ほんとは失礼だ、と思った。でも、わかってほしい。この涙は、決して同情なんかじゃないよ。力いっぱい生きる彼らの心の強靭さと柔軟さ、彼らの内から溢れてくる健康で力強い光が、まぶしくてたまらなかった。その光を引きだした無着先生のかけがえのなさに打たれる。
読了日:7月22日 著者:
素白先生の散歩 (大人の本棚)素白先生の散歩 (大人の本棚)感想
独りで行く素白先生の横に並び、素白先生の目で物を見、物を感じながら、ゆっくり歩くように読む「散歩」は気持ちのよいものだった。好きなのは、『深夜の水』というとても短いエッセイです。 言葉でスケッチしていくような一編。静かに音もなく、一幅の絵が描きあがっていくのを、ただ見守っている。
読了日:7月20日 著者:岩本 素白
町かどのジム (子どもの文学・青い海シリーズ)町かどのジム (子どもの文学・青い海シリーズ)感想
(再)『ズボン船長さんの話」を読みながら、『町かどのジム』を思いだして、しばらくぶりに読んだ。デリーに語る物語は、荒唐無稽なものばかり。でも、どれも、温かい。すぐに壊れてしまいそうに繊細に見えるけれど、実はとても強靭で、明るい。そんなお話ばかりなのだ。お話はジムの目の輝きに似ている。
読了日:7月19日 著者:エリノア ファージョン
ズボン船長さんの話 (福音館文庫 物語)ズボン船長さんの話 (福音館文庫 物語)感想
初めてケンと一緒に覗いた船長さんの家があまりに素敵で、歓声をあげたくなった。船長さんの語るお話は語り終わっても見えない所でずっと続いている気がする。ズボン号の新しい航海。乗っているのは船長さんとあと、だれとだれとだれ? 良い旅であるようにと祈る。ボン・ヴォヤージュ!
読了日:7月18日 著者:角野 栄子
天使で大地はいっぱいだ (子どもの文学傑作選)天使で大地はいっぱいだ (子どもの文学傑作選)感想
小学生でも一家の大事な働き手であるサブたち。隙間のわずかな時間を無限大に変えて遊びきるサブたち。読みながら手足がぐんと伸びるような気がした。働いても働いても貧乏だ、という農家に育ちながら、サブの大きな夢は百姓になることなのだ。なんと輝かしい財産をもっているのだろう、父さん母さん。
読了日:7月14日 著者:後藤 竜二
パヴェーゼ文学集成 〈2〉 長篇集 美しい夏パヴェーゼ文学集成 〈2〉 長篇集 美しい夏感想
壊れてしまった後で振り返ってみれば、壊れ始めたころ(そのときにはまったくそのことに気がつかなかった)が一番美しいのだった。壊れたのはきっと無垢な時代。ため息をつくようにして振り返っている。二作目『丘の上の悪魔』が一番よかった。
読了日:7月13日 著者:チェーザレ・パヴェーゼ
ヘリオット先生の動物家族 (ちくま文庫)ヘリオット先生の動物家族 (ちくま文庫)感想
笑ったり、苦々しく思ったり、ほろりとしたり、忙しい本だ。忙しいけど、せわしなくはないのだ。なんといってもここはヨークシャーの牧草地帯。ひとも動物もちっとも急がない。なべて世はこともなし、と清々しく読み終わりたかった。戦争が追いかけてくるようだ。
読了日:7月12日 著者:ジュームズ ヘリオット
わが名はアラム (ベスト版 文学のおくりもの)わが名はアラム (ベスト版 文学のおくりもの)感想
アラムの出会った類稀な人々が、出来事とともに紹介される。驚きの価値観にびっくりだけれど、素晴らしい無形の贈り物をもらったような気がするのです。そういうものを浴びながら大きくなったのだとしたら、アラムが著者であろうとなかろうと、将来詩人になるしかないじゃないか、と強く思うのであった。
読了日:7月8日 著者:ウィリアム サロイヤン
牛追いの冬 (岩波少年文庫)牛追いの冬 (岩波少年文庫)感想
(再)私がこの本を読み終えて、本を閉じてもなお、彼らの生活はこのあともずっと続いているのだ、ということが羨ましい。次の夏は、きっと大変なことになるんじゃないかな、と思いやられるけれど、元気に山に登っていくだろう子どもたちが、ほんとうはかなり羨ましい。
読了日:7月6日 著者:マリー ハムズン
小さい牛追い (改版) (岩波少年文庫134)小さい牛追い (改版) (岩波少年文庫134)感想
(再)なんでこんなに気持ちがいいのか、といえば、まずは、兄弟が、一家の重要な働き手だからだろう。歳相応とはいえ、私よりずっと役に立ちそう。家族の輪が輝かしいのも、やっぱりそういうわけなのかもしれない。遊びに夢中になりすぎたために起こるとんでもない事件や笑っちゃう顛末は御愛嬌である。
読了日:7月5日 著者:マリー・ハムズン
家と庭と犬とねこ家と庭と犬とねこ感想
生涯持つべき無形の財産を、小さく少なくまとめ、生きてきた方なのだ。清々しく。見た目小さく少ない物の奥行きの深さ広さ、真似できないけど憧れてしまう。『波長』の「このごろは、本もまるで消耗品のようなありさまで…」の話は耳が痛かった。「ひとり旅」の石井桃子さんの一人の豊かさが素晴らしい。
読了日:7月4日 著者:石井 桃子
地図になかった世界 (エクス・リブリス)地図になかった世界 (エクス・リブリス)感想
ままならない人生だ。希望が潰えて失意のうちに死んでいく。帰りつきたい故郷には帰れず、悪者はのさばる。それでも、今日一日、温かい日であれば、と空を見上げる。最後に織り上がった地図をみれば、胸がいっぱいになる。どの人も私は良く知っている。ああ、みんないる。誇り高く顔をあげている。
読了日:7月3日 著者:エドワード P ジョーンズ
ハックルベリー・フィンの冒険 下 (岩波文庫 赤 311-6)ハックルベリー・フィンの冒険 下 (岩波文庫 赤 311-6)感想
「おらは悪者に育てられたので、悪者のほうが性に合っていて、その反対のほうはだめなんだから、また悪者に戻ろう」悪者はなんていい奴なんだ。血も涙もない正義の味方はいっぱいいる。トムからバトンタッチされたハックの冒険、またトムに戻された。もっとハックとジムの旅、読んでいたかったな。
読了日:7月2日 著者:マーク トウェイン
ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (岩波文庫)ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (岩波文庫)感想
大嘘つきのならず者だけど、なんていい奴なんだ、ハック。「はしがき」で、当時の南部の普通の人の奴隷制に対する考え方について書かれていた事が、とても参考になった。一緒に旅するうちにジムが大切な友になっていく一方、奴隷の逃亡を助けていることに深く悩むハックの姿が印象的。下巻へ。
読了日:7月1日 著者:マーク トウェイン

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