高慢と偏見、そして殺人

高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』から六年の歳月が流れ、ダーシーとエリザベスのベンバリー館が殺人事件に巻き込まれます・・・
なつかしい人物たちが総出演、突然の悲劇に巻き込まれ、あっちにこっちに転がされるのですが、読後感がとってもいいのです。
高慢と偏見』のイメージを汚すことなく、そっくりそのまま、読者のもとに返してくれたなあ、と思いました。


そして、物語の所々、六年前の出来事を折々に振り返って、あの時彼・彼女は、本当はこんなことを考えていたのではないか、それからあの時のあの事件にはこんな裏があったのではないか、と、著者なりの解釈や推理が、登場人物たちの言葉となって語られます。
そう言われてみると、ああ、それはありそうだ、と頷き、そういうことがあったとしても不思議はないよね、と、また頷きました。
ミステリそのものよりも、作者による本家『高慢と偏見』の様々なシーンの(人の心の)謎解きの巧みさに、唸ってしまった。


この本はきっと作者P・D・ジェイムズからオースティンへの熱烈なラブ・レターだ。
そして、オースティンの作り上げた世界で思う存分遊び、思う存分語っている。そんな気がしました。


あのね・・・一つだけ不満。なんで「あの人」が探偵じゃないんだ!!