10月の読書

2012年10月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:3541ページ

ビルバオ-ニューヨーク-ビルバオ (エクス・リブリス)ビルバオ-ニューヨーク-ビルバオ (エクス・リブリス)感想
断片的に脈絡もなく現れる沢山のエピソードが、読み終えたとき、美しい年輪が描かれているのをみて、ため息をつきたくなった。最初に現れた文章が、ぐるりと回って、最後に閉じられた輪になる仕掛けも…美しい。中心に向かって静かに閉じている、あるいは、中心から、波紋のように広がっている、両方のイメージが見事に調和した年輪。
読了日:10月30日 著者:キルメン ウリベ
図工準備室の窓から: 窓をあければ子どもたちがいた図工準備室の窓から: 窓をあければ子どもたちがいた感想
口絵の準備室の写真のように不思議で素敵な雑然が文章になったようだった。子どもたちの声、同僚たちの言葉、笑い顔、恩師への思い…ランサムやドリトル先生だって出てくるのだ。エッセイだから、魔法もない、不思議もない、はずなのに、(痛みや涙は戸棚にきっと隠して)やっぱりこの本は魔法と不思議の本だった。
読了日:10月28日 著者:岡田 淳
月の骨 (創元推理文庫)月の骨 (創元推理文庫)感想
心に残るのは一つの罪。もっとも怖ろしい罪は「忘れる」ということかもしれない。ほんとうは怖ろしかった。わたしの一番苦手な話。のはず。でも、与えられたのは、思いがけない平和。(コレハ、ユルシ、カ?) やっとここに辿り着いたばかりでしょ、それなのにもう行ってしまうのか、と、そんな気持ちで、この本の世界と別れる。
読了日:10月26日 著者:ジョナサン・キャロル
毎日の手紙のようなお弁当毎日の手紙のようなお弁当感想
凝ったものや珍しいものが載っているわけではない。絵のような派手さはないし、奇をてらってもいない。うちも時々作っているな、と思うようなおかずたち。大切なのは「手紙のような」というところ。伝えたい言葉を綴るように、届けたい思いを乗せて作る日々のお弁当は、開けたときにほっとする。冷めていても温かく感じる。とてもおいしそう。
読了日:10月25日 著者:山本 ふみこ
スコーレNo.4スコーレNo.4感想
「居場所をきれいに整えることは、居心地を良くしてその場所を味方につけるようなものだ」という。それ、その居心地の良さ。わたしがこの本を読んで感じるのも、それに似ています。この本は居心地がよい。この居心地の良さは、私の味方になってくれている。そう感じています。
読了日:10月23日 著者:宮下 奈都
光のない。光のない。感想
イェリネクは、決して遠くから、あるいは一段高いところから無責任な言葉を放っているのではない。理解できてはいないのだけれど、この短い戯曲の中に散らばる混乱と暗さのなかで、一年半、何も終わらないまま、自分が孤立した小さな塊に過ぎないことをたまらなく感じてしまった。「多くの、多くの報道を読んだ。ソポクレースアンティゴネー」も」 読むべきは、報道や関連本ではなくて、古典かもしれない。
読了日:10月21日 著者:エルフリーデ イェリネク
女の二十四時間―― ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)女の二十四時間―― ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)感想
どの物語も、語り手の言葉、丁寧な状況描写に身を置きながら、決して人ごとではない居心地の悪さや緊張感を味わった。そうして、読後に訪れる解放感に浸りながら、彼らの話がこんなにリアルに感じるのは、形を変えて自分にも起こった何かだったか、と考える。そして、今味わった解放感を、その時、だれが与えてくれたのだろう、と考えている。
読了日:10月19日 著者:S.ツヴァイク
鉱物見タテ図鑑 鉱物アソビの博物学 (P-Vine Books)鉱物見タテ図鑑 鉱物アソビの博物学 (P-Vine Books)感想
スプーンの上でぷるぷる震えるゼリー、ざっくり刺繍された毛糸のバラ、長い時を読み継がれてきた分厚い古書、沙漠に現れた多肉植物、天上に輝く星、思案深げな不思議な生き物……でも、これ、ほんとうはみんな鉱物だなんて。固くて冷たい鉱物だなんて!
読了日:10月18日 著者:フジイキョウコ
グランパ・グリーンの庭グランパ・グリーンの庭感想
ときどきいろいろなことを忘れるようになったというおじいちゃんですが、孫は「でもだいじょうぶ」と言います。わたしも「大丈夫」を知っています。だって、このひ孫にわたし、ついてきたんだもの。緑あふれる絵本のページには、温かい日の光が注いでいるような気がします。
読了日:10月17日 著者:レイン スミス
庭仕事の愉しみ庭仕事の愉しみ感想
ヘッセによって描かれる庭は、年を経ても若々しくて、思慮深い。好きなのは、少年時代の思い出を語った文章。儚いけれども、見えないけれども、その事実は動かし難い別のものに姿を変えてちゃんとここにある、と感じた。満足して、美しい文章に身を任せていられる自分の読書を幸せと思った。
読了日:10月16日 著者:ヘルマン ヘッセ
The Casual VacancyThe Casual Vacancy感想
イギリスの架空の町の話かもしれないが、一方で自分の町、自分たち家族の物語かもしれない。誰もがよく知っている人なのに、本当の姿は誰も知らない。自分の姿さえ知らない。見ようともしない。少しずつ、この町の地図が頭の中に出来上がっていく。これからの地図を作るのは、あの子たち、と思うと気持ちが上に向きます。
読了日:10月14日 著者:J.K. Rowling
南から来た男 ホラー短編集2 (岩波少年文庫)南から来た男 ホラー短編集2 (岩波少年文庫)感想
怖さも、ひたひたと感慨深く(?)やってくる。怖い話なのに、怖さの補色のちらちらした美しい光のほうが印象に残るもの。美しく切ない話を読んだ…はずなのに、あとからじわーっと恐ろしさが滲み出てくるもの。寓話的で、むしろ哲学的かと思うような深みのあるもの。どの作品も「味わい深い」の一言では片付けられない。いいもの読んだ、と満足。
読了日:10月12日 著者:
窓の向こうのガーシュウィン窓の向こうのガーシュウィン感想
足りない人たちの物語だ。そして、ちゃんと考えてみれば、実は足りないのは、「足りない人たち」の周りの人間たちかもしれないのだ。わたし自身、足りないなんてことを考えずに暮らしてきたんだなあ、と気づく。足りないことに気がつくのは素敵なことだ。「足りなさ」を善きもので埋めていく空間は、なんて、豊かなのだろう。心地よいのだろう。
読了日:10月9日 著者:宮下 奈都
行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙感想
凝った、隅々まで遊びきったチャーミングな本。作者が(そして翻訳者さんも)すごく楽しんで作り上げた本なのだろう、と想像します。ある日突然、いるのかいないのかわからない伯父から、こんな素敵な手紙が届いたら、どんな気がするだろうなあ。どこかでまだ「あぶらくそっ」と言いながら、冒険の旅を続けているかもしれない(笑)
読了日:10月4日 著者:マーヴィン ピーク
海にはワニがいる海にはワニがいる感想
世界中にたくさんのエヤナットがいるのだろう。しかも、彼がくぐりぬけてきた危険な多くの場面の中で、今も生きている。(途上で命を落とすものも沢山いる、そこで恐怖と闘いながら暮らす者もたくさんいる、殺人を強制される兵士になった者もいるはず) 多くのエナヤットたちが生き抜き、自分の物語を語れるように。
読了日:10月1日 著者:ファビオ・ジェーダ

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