『黄色の扉は永遠の階(第三の夢の書)』 ケルスティン・ギア

 

黄色の扉は永遠の階 (第三の夢の書)

黄色の扉は永遠の階 (第三の夢の書)

 

 

第三の夢の書。とうとう三部作完結編。
夢の世界の冒険は、もはや夢の世界だけでは終わらない。どんどん現実を侵食し始めている。
何が起きているのか誰にもわからないし、わかったとしても止めようがないし、裁くこともできない。


主人公リヴの命が狙われた。
というより、はっきり「殺す」と宣告された。防ぐことはできない。
恋人のヘンリーも、(近い)将来の義兄グレイソンも、窮地に立たされる。
この切羽詰まった状況を、当人たち以外、誰も知らない、知りようがない、というのは恐ろしいことだ。


と、いうわりに、今一つ深刻な感じにならないのは、軽やかな語り口と、この物語が学園ラブコメの面も持っているせいだ。
また、リヴとミア姉妹のナニー、ロッティが次々に作ってくれる、スイーツ(誰だって笑顔になる)の匂いが、物語全編に漂っているおかげかもしれない。


リヴとヘンリーをはじめとして、あちこちでいろいろな人たちが恋している。
不器用だったり、いきあたりばったりだったりで、はらはらする。時々、身勝手さに、むかむかする。
軽やかな物語だけど、一人一人をとりあげれば、かなり醜悪な部分も、容赦なく書いていて、物語は、噂のブロガー、シークレシー以上に、意地が悪い?
その、シークレシーの正体もいよいよ明らかになる。


前・前々巻から、気になっていたいろいろな謎が、ここで一気に解けていく。
だけど、それよりも……
思いがけない人たちの思いがけない面が、いきいきとがたちあがる感じがおもしろい。
主人公の姿が一気に霞むほどに、一筋縄でいかない、したたかな人たちに幸あれ。

 

『緑の扉は夢の入口(第一の夢の書)』 ケルスティン・ギア - ぱせりの本の森

『黒の扉は秘密の印(第二の夢の書)』 ケルスティン・ギア - ぱせりの本の森