- 作者: ケルスティン・ギア,ワカマツカオリ,遠山明子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2018/04/12
- メディア: 単行本
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リヴとミアの母アンが恋人アーネストと一緒に暮らすことになったため、一家はロンドンに引っ越し、アーネスト一家と合流する。
新しい学校フログナル・アカデミーに転校して、すぐ、リヴは、バスケットチームの花形にして美形の上級生男子四人組と出会う。
学園の女子たちの熱い眼差しを一身に受けた四人は、リヴに近づいてくる。
四人の内ひとりがリヴの義理の兄となり、もうひとりから「秋の舞踏会」のパートナーにと誘われる。
なぞのブロガーも出てくるし、濃い性格の義姉やら同級生、上級生も出てきて、波乱の予感があっちにもこっちにも。
さあ、学園を舞台にした豪勢なラブコメが始まった!・・・ただし、昼間だけならね。
夜の物語には別の顔がある。
寝ている間に見る夢は、なんて不思議なのだろう。
楽しい夢も悪夢も、現実やそれに伴う気持ちを暗示しているようだけれど、突然、突拍子もないことが起こったり、摩訶不思議な風景に変わったりする。
ときには自分が今夢を見ていることを意識していることもある。
でも、これだけは無理でしょう、誰かと同時に同じ夢を見ること。
互いに、これは夢だと意識しながら、夢の中で出会ったり、語り合ったり、一緒に冒険したり・・・。
もし、そんなことが起こるなら・・・その夢は何なのだろう。
さらに、夢が、現実を浸食してくるなんてことが、あったとしたら・・・
ある晩、リヴは夢の中で、義兄となるグレイソンを見かける。彼のあとについていくと、そこは墓地だった。そこで、かの美形四人がそろって、何やら怪しげな儀式らしきことを始めたのだ。
その夢のリアルな感触。
やがて、リヴは知るのだ。この夢の記憶は、四人の男子と自分自身、五人共通のものであることを。
夢が、現実よりもリアルに感じられる物語である。
まずは大きな廊下があり、廊下の壁には沢山の扉がある。
各人の見る夢は、各人の「部屋」なのだ。廊下の扉は、各々の夢の「部屋」の入口だ。
扉は、みんなデザインが違う。その扉を見ただけで誰の「夢」の入口なのかわかるような個性的なものもある。
扉を開けるには、それぞれ別の法則がある。(なぞかけだったり、鍵だったり)
遠くの国へ引っ越してしまった友人や、昼間なかなか言葉を交わすことのできない人と、この廊下でばったりあったり、互いの夢の扉を開けて、招待したりされたり。忍び込んだりも。
わたしは、この夢の世界の廊下に魅了されてしまった。
しかし、楽しい話ばかりではないのだ。
四人の青年は墓地で何をしていたのか。
四人の物問いたげな眼差し、不安そうな表情…
近づくな、と警告されればされるほど近づかずにはいられない。リヴは謎とき大好きな女の子なのだ。
夢の世界と現実の世界を行き来し、秘密を探り、罠を警戒し、危ない冒険が始まっている。
ハラハラしつつ、ノリのよい文章につられて、読んでいるこちらもわくわくしてくる。
素敵な男子に囲まれて、夢のようなロマンスも、いやいや、そんなに夢中になっちゃって大丈夫なのかな、とおばさんは時々心配になる。
なかなか見えてこない全体図を、つまりこういうことかな、ああいうことかな、と大胆に予想したり、推理したり。それが、ことごとく外れてたり。(外れた故におもしろい冒険だった。)
けれども、何もかもが解決するわけではない。まだわかっていないことがある。続きがあるのだ。
もしかしたら、今回解決したはずのことも、とんだ見当ちがいだったってこともあるのかな。最後の「微笑み」が気になるぞ。
『訳者あとがき』によれば、第二部・第三部の翻訳はすでに終わっているとのことなので、それほど待たなくても続きが読めるのではないか、と期待しています。
『黒の扉は秘密の印(第二の夢の書)』 ケルスティン・ギア - ぱせりの本の森
『黄色の扉は永遠の階(第三の夢の書)』 ケルスティン・ギア - ぱせりの本の森