『バルバルさん』 乾栄理子/西村敏雄

バルバルさん (こどものとも絵本)

バルバルさん (こどものとも絵本)


バルバルさんはとこやさんです。
腕のいいとこやさんであることも、律儀なとこやさんであることも、読んでいるとおいおいわかってくるのですが、何よりも「まいにち たのしく はたらいて」いるのがいいなあ、と思う。


バルバルさんの店に、ちょっと変わったお客さんが次々にやってきた日があった。
最初にきたのは、ライオン。
びっくりだけれど、とこやさんにくるライオン、どうしてほしいのか、言われなくてもなんとなく見当がつくではありませんか。
でも、次にやってきたワニは・・・ワニは何を求めてとこやさんに?
次々の変わったお客の変わった要望に、驚いたり、感心したり。
お客さんを大切にするバルバルさんのきまじめな応対がいいなあ。


おはなしの中の時間は、ゆっくりと流れる。
空気もなんだかおっとりとして、バルバルさんの店で髪を切ってもらいたくなる。
きっと、リズミカルなハサミの音が気もちよくて、安心してうとうとしてしまうかもしれない。


バルバルさんの顔の表情の変化は、あるかなきか、というくらいに、とても控え目に描かれる。
でも(だから?)、読み手には、そのおだやかな顔のなかに、いろいろな表情が見える。
静かな海で、のびやかに泳ぎ回っているみたいな感じで。


バルバルさんのとこやさんは、青い屋根と青い壁のお店だからかな、この絵本のいろあいは、全体的に青いのです。
今更ながらに、青い絵本だということにきがついて、驚いています。
確かに青なのだけれど、なんだか暖色のような気がするから。不思議な青です。