1月の読書

2017年1月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:3058ページ

アリスのうさぎ (ビブリオ・ファンタジア)アリスのうさぎ (ビブリオ・ファンタジア)感想
図書館の児童読書相談コーナーにすわるバイトの青年のもとに、不思議な体験を聞いてもらいに来る人がいる。装丁の絵の図書館の空気が好き。棚の本たちが鷹揚に受け、黙って棚に同居させてくれているのかな、と思ったり。この青年、児童読書相談以上に、人に不思議体験を話したい気持ちにさせる人だ。それがまたもう一つの不思議話。
読了日:1月30日 著者:斉藤洋
ピーター・パン (岩波少年文庫)ピーター・パン (岩波少年文庫)感想
知っているつもりでいた物語のあちこちには、こんなにたくさんの小さな宝物がちりばめられていた事を私はすっかり忘れていた。この物語の終わりの方で、大人になってしまったウェンディの前に、昔のままの姿のピーター・パンが現れたときのように、私もこの本を読むことで、古い友達に再会した気持ちでいる。そして、なんて沢山のことを忘れてきたのだろう、と驚いている。
読了日:1月26日 著者:J.M.バリ
ねこまたのおばばと物の怪たち (角川文庫)ねこまたのおばばと物の怪たち (角川文庫)感想
人ならぬ物の怪のほうに、人よりずっと人間味を感じるとは、なんとも皮肉だ。昔、親と子どもとの間には大きな境界があったような気がする。だから、今、親も子どもと同じラインに立ち、自分の物語を語りあえる、対等な人間同士なのだ、との気づきが、面白い。気づきは、彼らにとっての「居場所」になる。子どもも大人も、自分を解放できる居場所が必要なのだ、きっと。
読了日:1月25日 著者:香月日輪
古森の秘密 (はじめて出逢う世界のおはなし)古森の秘密 (はじめて出逢う世界のおはなし)感想
森には、森の流儀があるのだろう。それは人の世の必然や正義とずいぶん異なる。物語は説明しない。そのため、この文章は少し不安な気持ちにさせる。不気味さを際立たせ、それゆえの美しさもひきたたせる。いつのまにか、なぜと尋ねたり、解釈したりを捨てて、一場面一場面をそのまま受け入れ、味わっている。たぶん、この本の言葉にならない不思議が、そのまま森なのだ。
読了日:1月23日 著者:ディーノブッツァーティ
緩慢の発見 (EXLIBRIS)緩慢の発見 (EXLIBRIS)感想
ゆっくりが得意な人も、早いことが得意な人もいるに違いない。でも、同じ時計の下にある社会では、それぞれの個性・流儀は考慮されることはない。ジョンが海に居場所を見出すことができ、自らの能力を思うさま発揮することができたのは、海には陸の上の時計がないからだろう。彼は成功し栄誉を得るが、その場所は緩慢を許さなかったのだと思う。皮肉な気がして仕方がない。
読了日:1月21日 著者:シュテンナドルニー
ひみつの校庭 (ティーンズ文学館)ひみつの校庭 (ティーンズ文学館)感想
庭への鍵は、成長する子どもたちが、次のステップへ進むために開ける扉の鍵のよう。同時に、自分でも気がつかずに埋もれさせていた痛みやとまどいに、風を入れてやるために開ける扉の鍵のよう。死んだように見えても次の季節には息を吹き替えす植物、何万年もの間生きながらえる植物などに囲まれて、成長、生、死の当たり前さや不思議さを思っている
読了日:1月18日 著者:吉野万理子
日本児童文学 2017年 02 月号 [雑誌]日本児童文学 2017年 02 月号 [雑誌]感想
「創作時評 心に寄り添う、時代を越える」(繁内理恵):一冊の本から何をどのように掬い上げるか、常々、繁内理恵さんの評論は頼りになると感じている。昨年の児童書の中から14冊。児童文学全体がYA作品にシフトしている、との指摘、「自分のスマホを子供が持つ前の期間に、子どもたちと物語を結びつける努力」との言葉をかみしめる。取り上げられた作品のうち、既読は『マルの背中』一冊のみだが、「どんな状況にあっても失われない人間の尊厳」という言葉印象に残る。「読む楽しみが一番!」との言葉をガイドに、未読作品も読んでいきたい
読了日:1月18日 著者:
たんたのたんてい (新しい日本の幼年童話 8)たんたのたんてい (新しい日本の幼年童話 8)感想
姉妹編『たんたのたんけん』で、望遠鏡と宝の地図をもって探検に出発したように、『たんたのたんてい』では、虫メガネをもって探偵になる。道具は、子どもが、何かをはじめるための、わくわくする必須アイテムなのだ。私の知っている中で、たんのたんたは、いちばん若い名探偵です。事件が解決したら、名探偵は新聞配達に戻るのです。新聞配達の必須アイテムはもちろん新聞。
読了日:1月13日 著者:中川李枝子
きびしい冬 (レーモン・クノー・コレクション)きびしい冬 (レーモン・クノー・コレクション)感想
第一次世界大戦のさなかのパリ。漂う閉塞感。これは一種の長い休暇の物語だ。苦い休暇。主人公はいずれ前線に戻る。美しいものをみつけたとしても、大切なものをみつけたとしても、それはどこにもつながってはいない。抱きしめても抱きしめても、抱きれない。
読了日:1月11日 著者:レーモンクノー
この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)感想
優しい映画、漫画。忘れられない人々。何度も見たい場面がいっぱいある。そうっとしまっておきたいような小さな美しいものをたくさん見た。しかし、それらは、非日常のなかで、だれが、どのようにして、生み出したものだったのか、見つけ守ってきたものだったのか・・・考える。そこに、戦争に抗う大きな力があるようにも思っている。
読了日:1月9日 著者:こうの史代
この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)感想
空襲に明け暮れる日々、知っている誰かが死んでいく日々、家も家族も奪われ、働きに働き、我慢に我慢を重ねてそれでも足りない日々。そうした日々のなかでは、普通であることも笑っていることも、戦いだった。敵は、生活を奪い去ろうとするものすべてだった。(ところで、ノートの裏表紙が四角く破れている理由を知って衝撃であった。)
読了日:1月9日 著者:こうの史代
この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)感想
映画を先に観てきて、原作を読んだ。映画と漫画とが、表現の仕方の違いなどから、補完し合っている感じになった。原作の余韻を引き摺りつつ、今、もう一度映画を観たくなっています。映画の中で、あるいはぼんやりと匂わせていたもの(それはそれでよかった)を、はっきりと見せられ、ああ、あれはそういうことだったのか!と目の前が開けたような気がした。
読了日:1月9日 著者:こうの史代
安閑園の食卓 私の台南物語 (集英社文庫)安閑園の食卓 私の台南物語 (集英社文庫)感想
台湾の、著者の思い出の人々、文化、慣習、風俗に触れているつもりでいた。だけど、本当は、その向こうに、日本の、地方の町家の細々とした暮らしや、一緒に暮らしていた人々をみていた。家族と一緒に囲んだ食卓の幸福感が蘇ってくる。毎日誰かに会って、毎日ご飯作って食べて・・・ずっとずっと続いている。宝はいつもここにあった。これからもきっとある。
読了日:1月8日 著者:辛永清
運のいい日 (創元推理文庫)運のいい日 (創元推理文庫)感想
三人の少年少女、どこか「ハミダシ者」目立つ存在なのだ。好きで目立つわけではない。目だってしまうことも、やるせない自分自身の一部。ちらっと見せる一瞬の素顔が、忘れられない顔になる。ビリー逮捕までの物語は結果をあらかじめ知らされていてもハラハラする。ジャズと父の関係はイマイチぴんとこない。本編の三部作を読めば、わかるようになるのかなあ。
読了日:1月6日 著者:バリー・ライガ
トランペットトランペット感想
彼がどのように自分の死を受け入れたか、そして、息子がどのように父の死を受け入れたか、大きくて美しい物語だった。肌の色、セクシュアリティ、己の出自。家族。死の意味。物語は、その家族の思い出を通して、一人の青年に旅をさせる。わかったこと。わからないこと。わかったことは、大切なことで、わからないことは、そのままわからないままにしておきたいことだった。
読了日:1月4日 著者:ジャッキー・ケイ

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