動物園ものがたり

動物園ものがたり動物園ものがたり
山田由香
高野文子 絵
くもん出版


動物園にいるのは、迷子の女の子。
仲良しのおじいさんとおばあさん。
けんかばかりしているおとうさんとおかあさん。
新米の飼育員さん。
ここで、そんな人を見た、ということも、交わした言葉も、きっともう忘れているくらいの通りすがりの人たち。
みんな、外から見ただけではわからない、いろいろと複雑な思いをもって、ここにいるけど、そんなことは、だれも気がつかない。
気がつかないままなのがいい。


動物園って不思議だねえ。
一日、ここにいると、何かがおこるのかもしれないねえ。
何も変わらないように見えるけど、ちょっとだけ足取りが軽くなったかもしれない。
ちょっとだけ口角あがったかな。
動物たちは、そんな人間たちをどう思って眺めているのかな。見ごたえあるよなあ、とつぶやいているかもしれない。


かばは英語でヒポポタマス。
ヒ・ポ・ポ・タ・マ・ス。うふ、ゆっくり言ったら、ほんとにおまじないの言葉みたいだ。
動物園に最後に行ったのは何年前だろう。
行ってみたくなった、久しぶりに。お弁当をもって。