4月の読書

4月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2655

思い出すこと (新潮クレスト・ブックス)思い出すこと (新潮クレスト・ブックス)感想
詩は、状況や人の姿を影絵のように漠然と伝える。束の間の情景を切り取った、少しぼんやりした写真のよう。隅から隅まで見えすぎない感じ、ぼやけた部分が画面から外へすうっと引いていく感じがよいのだと思う。最後に、彼女は外にでていく。外気。寒さが気持ちよいこと。
読了日:04月27日 著者:ジュンパ・ラヒリ
住宅読本住宅読本感想
この本一冊まるごとが、美しい家なのだ、と感じる。かくれんぼする子どもたちの忍び笑いが聞こえてくる。身近にツリーハウスのような隠れ家をもっていなくても、この本のなかにもぐりこんだら、静かで満ち足りた時間が過ごせると思う。居心地のよい隠れ家をいっぱい備えた美しい本だ。
読了日:04月25日 著者:中村 好文
本の中の世界 (大人の本棚)本の中の世界 (大人の本棚)感想
この本で著者がとりあげる書物は、文学作品として優れているのはもちろんだけれど、一人の読者にとって、かけがえのない書になるのは、夢中で読んだ当時の思い出と混ざり合うせいもあるのだろう。それはとてもよくわかる。きっと誰にでもあるにちがいない。あの時この時の私の一冊をわたしも思い出している。
読了日:04月22日 著者:湯川 秀樹
私立探検家学園3 天頂図書館の亡霊 (福音館創作童話シリーズ)私立探検家学園3 天頂図書館の亡霊 (福音館創作童話シリーズ)感想
さまざまな場面を通じて、この巻の主題は、きっと「ことば」だ。文字の始まりや、音楽と言葉との関係など、興味深いことばかり。考え進めることの楽しさ。その一方で、生徒がひっそりと「ことばってこわいですね」と言う、深刻な事態があらわれる、落とし穴みたいに。何の気もなく受け流してきた言葉に少しだけ注意深く読む。
読了日:04月18日 著者:斉藤 倫
マギンティ夫人は死んだ (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 24)マギンティ夫人は死んだ (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 24)感想
長閑に続く日々、罪のない噂話の村。物語の道中、名前も覚えきれないほどの群像たちが、それぞれの思惑をもって自在に動き回る姿を眺めることが、道草のようで楽しかった。それぞれ、ひとりひとりが、語るに足る物語を持っているように感じたから。はっと居住まいをただしたくなるいくつもの瞬間を楽しみながら読んだ。
読了日:04月16日 著者:アガサ クリスティー
埴原一亟古本小説集埴原一亟古本小説集感想
時期は、おもに(戦中を引き摺りながらも)戦後の混乱期の頃だろうか。主に作家であり古書店の島赤三(作家自身だろうか)を主人公にした七編の短編。底のほうから天井を仰ぐと、見えないものが見えることもあるものだと思う。見捨てられた人たちが、見捨てた人に対して、なんだ馬鹿馬鹿しい……と笑い飛ばしてしまう生命力が心に残る。
読了日:04月13日 著者:埴原 一亟,山本 善行
星合う夜の失せもの探し: 秋葉図書館の四季星合う夜の失せもの探し: 秋葉図書館の四季感想
社会は目まぐるしく変わっているのに、図書館に一歩入れば二十年前も現在も、ほとんど同じ景色だ。図書館と聞いてほっとするのは、本が好きだから、ということとともに、そういう変わりのなさを信頼できるからかもしれない。最後に秋葉図書館の「そもそも」を聞くことができたのがうれしかった。
読了日:04月10日 著者:森谷 明子
冬将軍が来た夏冬将軍が来た夏感想
どん底に落ちていた「私」が祖母と過ごした強烈な夏。「人生には結末があるけれど、どの結末もすべていいとは限らない。でも記憶はいちばん美しいところで止まることができるし、いちばん美しいところで止まったものは、みんないい物語よ」名残惜しさと、まさかの洗われたような清々しさと。
読了日:04月07日 著者:甘耀明
私立探検家学園2 あなたが魔女になるまえに (福音館創作童話シリーズ)私立探検家学園2 あなたが魔女になるまえに (福音館創作童話シリーズ)感想
やはりこの学園は謎がいっぱい。一番不思議なのが実習で「世界」の異質さにうろたえる。生徒たち自身、この体験はあり得ないと感じている。不思議以上に不気味と感じるのは、「わたしたちは、あるいみ、みんな、しんでもいい子たちなんだ」という、こういう言葉を生徒に言わせてしまうことだけれど。
読了日:04月04日 著者:斉藤 倫

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