『こしたんたん』 りとうようい

 

一頭のトラが、ひそかにウサギを追いかけて、藪の中を走っている。
ウサギは、水を飲むために立ち止まる。
隠れたトラは、これはチャンス! と目玉ぎらぎら、「虎視眈々」と狙いを定めて……。


ところが水場には、次から次に新しい獲物が。しかも後からくる獲物ほど大きくなっていくではないか。
トラは、といえば、隠れ場にいて、
もはや緊迫感などどこに行ってしまったのか、新しい動物が現れるたびに高まる期待に、とろけていく表情や、くねくねの姿態が、まるでバターみたい。
はっきりした色合い、動物の大きな表情の変化は、なんともダイナミックで、おかしい。
だけどトラ、どうやって、この動物たちを残らずモノにできるかな。それとも、いちばん食べ応えのあるのを狙うのかな。


食うか食われるか、シビアな命のやりとりを背景にして、この笑いは、ともに命を食らって生きる者としての共感かな、哀れみのようなものかな。


選び抜かれた短い言葉、間。ことに韻を踏んだ(?)言葉遊びが楽しい。
こしたんたん、こしたんたん、こしたんたん……リズミカルに続く、たくさんの「こしたんたん」と、
それから、
こしトントン、
ほしランラン、
と。