11月の読書

11月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:2798

最後の語り部最後の語り部感想
たった一人で巨大なものに立ち向かう主人公の味方は、昔、聞かされた膨大な「物語」と、幸せな日々の記憶。彼女の思い出に何度も温められながら、何かがおかしいと考える人に、立ち止まり考える力を、それから力強く足を踏み出す勇気を、与えてくれる一番大きなものは、子ども時代の幸せな瞬間瞬間の記憶かもしれないと思った。
読了日:11月27日 著者:ドナ・バーバ・ヒグエラ
満潮に乗って (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)満潮に乗って (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
「ドラマ重視型」なので、読者としては、事件が起こるまでに長い時間をかけて登場人物一人一人と丁寧に付き合ってきた。思いいれのある人も何人か。読みながら、漠然と彼らを犯人候補から勝手に除外している自分に気がついた。戦争が終わったばかりのイギリス。静かな暮らしに混ざりこんでくる時代の背景が心に残る。
読了日:11月25日 著者:アガサ・クリスティー
ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)感想
この作品集に描かれる年代は、おもに1960年代。それを思えば、物語のなかの「現在」はもう、今のわたしにとってはかなりノスタルジックな世界なのだ。今後、そちらから、こちら(2023年)に何かしらのコンタクトがあるのではないか、それとも、既に私が気づいていないだけで何かが起こっているのではないか。そんな気持ちになる。
読了日:11月21日 著者:ジャック フィニイ
ガザに地下鉄が走る日ガザに地下鉄が走る日感想
痛いなんて言葉も恥ずかしくなる厚み。それでもガザに地下鉄が走る日へと希望を託す。メモ。人権を剝ぎ取られたノーマン(人ではない者)の事。「真の平和とは、直接的暴力に加え、構造的暴力のない状態」という言葉。「地獄とは人が苦しんでいる場所ではない。人の苦しみを誰も見ようとしない場所のことだ」という言葉。
読了日:11月16日 著者:岡 真理
犬のかたちをしているもの犬のかたちをしているもの感想
女の身体のこと、行為とその結果について。そして愛について。生まれてくるこども。生まれてくる命、死んで行く命。当人には何もできない。それを左右できる立場の人々が、なんだか中途半端で(中途半端に優しくて)苛立つ。要領のいい悪魔がどこか見えないところで糸を引いているんじゃないだろうか。笑えない喜劇みたい。
読了日:11月15日 著者:高瀬 隼子
黒と白のあいだで 翔の四季 秋黒と白のあいだで 翔の四季 秋感想
見えたまま、きこえたままじゃないなら、正義ってなんだろう。翔の目線でゆっくりと進む物語は、途中で、さまざまな問いを読者に投げかける。答えは一通りではないから、考える。前回同様、まるで端役のように登場する動物が大きな役割を果たしている。偏った正義を責めることもせず、もくもくと生きる小さき者たちの代表のよう。
読了日:11月12日 著者:斉藤 洋,いとう あつき
検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? (岩波ブックレット 1080)検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? (岩波ブックレット 1080)感想
ナチスの問題だけに関わらず、思い当たることもある。何かで、これが正論、とあまりにきっぱりといわれたら、ほんとに?と疑いたくなる。そういう時に「真実は真逆だよ」と極論を囁かれたら、あまり考えもせず「ほらね、そうだと思った」と単純に乗ってしまいそうな自分に思い当たり、はっとする。一言一言が他人事ではなかった。
読了日:11月09日 著者:小野寺 拓也,田野 大輔
やまの動物病院やまの動物病院感想
まちの先生の患者さんもとらまるの患者さんも、みんな先生を頼りにしているし、感謝している。何よりも、夜間診療のやまの動物病院のことを、昼間のまちの先生は何も知らないのが楽しくて、読者としては、とらまる先生の共犯になったような気分で、にっこりしてしまう。
読了日:11月05日 著者:なかがわちひろ
ハムネット (新潮クレスト・ブックス)ハムネット (新潮クレスト・ブックス)感想
野生的で、森の気に溶けてしまいそうな、伸びやかなアグネスに魅了される。一方、なぜ父親は亡くなった子どもの名前を題名に据えてあの戯曲を書いたのか。あの、誰もが知っている(と思っていた)シェイクスピアの戯曲に、なにか秘密があるというのだろうか。最後の数ページ。観客の一人になって、私は舞台に駆け寄りたくなる。
読了日:11月03日 著者:マギー・オファーレル
ルクレツィアの肖像 (新潮クレスト・ブックス)ルクレツィアの肖像 (新潮クレスト・ブックス)感想
檻に閉じ込められた虎は、二度と密林に戻ることはできないのだろうか。私は、嘗ての七歳の少女のように、檻の中の虎をじっと見つめているような気持ちになっている。 動物園の虎の最期も思い出しながら、でも、見た目とは違う本当があるのでは、と思ったりした。
読了日:11月01日 著者:マギー・オファーレル

読書メーター