『きみだけの夜のともだち』 セング・ソウン・ラタナヴァン

 

ガスパールはさびしがりやでちょっとこわがりのおとこのこ。
くらやみがこわくて、いろいろ考えて眠れなくなってしまい、「ぼくに夜だけのともだちがいてくれればなぁ」と考えます。


夜だけの友だちって、どんな友だちだろう。
表紙の絵は、お話の中の一場面だけれど、階段を降りていく男の子と、手すりの上を歩いていく小さなネズミの女の子がいる。でも、気になるのは、実体ではなくて、二人の影のほうなのだ。壁に写った二人の影は、同じくらいの背丈で、並んで(もしかしたら手を繋いで?)歩いているみたいに見える。
夜の友だちって、影みたいなものかな。自分ももちろん影になっていて。


最初のページでガスパールはソファにもたれて本を読んでいるのだけれど、部屋のなかのいろいろなものの影たちには不思議なことが起こっている。この部屋の姿がガスパールという男の子の紹介みたいにも思える。
ガスパールは寝る時間をすぎると、自分の部屋から階段をおりて、居間や台所、お風呂場などで、次々に夜の友だちに出会うのだけれど、どの部屋でも、昼間の面影を残しつつ、変わったことが始まっている。


華やかな色合いだけれど、賑やかとは思わない。シュールな世界だけれど、わくわくどきどきというのとはちがう。
幻想的な世界を揺蕩うような心地よさで、ゆったりと眠りにいざなっていく、美しいおやすみなさいの絵本だと思う。


おやすみおやすみ、よい夢をね。
(夜の友だちは、昼間は別の姿で、ほらね、ちゃんとあそこに、ここに、いる。)