『青いパステル画の男』 アントワーヌ・ローラン

 

骨董のコレクターであるショーモンは、ある日、オークションで、18世紀に描かれたたという肖像画を見つけて驚く。その顔は自分にそっくりだったから。夢中で落札した肖像画の中に描きこまれていた紋章を手がかりに、彼は、肖像の人物が何ものなのか、見つけ出そう、と考える。それが始まりだった。


蒐集品に囲まれて上等なウィスキーを口にする。それがショーモンの至福の時間。そしてお決まりの文句を唱える。
「ピエール・フランソワ・ショーモン、お前はそこにいるのかい? ノック一回で、はい、ノック二回で、いいえ」


物語は一部と二部に別れている。
二部に入ったところから、突然舞台がくるりと変わる。本当に偶然なのかと思うようなまさかの出会いや、どんでん返しに、終始、開いた口が塞がらないくらい。何度も、一部を見返して、ここが伏線だったのか、そういうことだったのか、と確認しては納得するのだけれど……。


なんなのだろうか、あまりにとんとん拍子すぎて、むしろ気味が悪い。次から次へと、そんなにうまくいくはずないでしょう。ないよね。
たとえば、いなくなっちゃった人は、なぜ出てこないか、と言えば……きっとそうに違いない、と、妄想はどんどん膨らんでくる。あの人もこの人も、あやしくないか。
そうこうしているうちに、最後のあれ――
あれをどう考えたらいいのか。
何もかもがひっくり返りますよ。これがもう一つの幕あけですよ。の狼煙が上がったんじゃないか、と私は思っているのだけれど。
終わりだけれど、これが始まりかもしれない。
なんとなくだけど、ノックの音が聞こえるような気がする。二回。