『キオスク』 アネテ・メレツェ

 

オルガはキオスクで働いている。
通りの隅っこにある小さなキオスクの壁面には、いろいろな商品がいっぱい。店の中のオルガは、立ち上がるまでもなく、ちょっと手を伸ばせばすべての品物を取ることができるし、そのまま、窓カウンターでお客さんの相手もできる。
小さなお店の小さな出入口に比べてオルガは大きすぎるため、店の外に出られない!
夜はここで眠るしかないけれど、旅行雑誌を眺めながら、何処にも行けない寂しさを紛らわせる。


わたしは若いころの一時期を暮らした小さな部屋を思い出す。狭かったけれど住めば都で、身の回りに自分の生活用品一切が揃っていたのは、なかなか快適だった。そのように楽しみながらしつらえたあれこれを思い出した。


さて、あるとき、オルガとキオスクにハプニングが起こる。
まさかまさか、と思わず声が出てしまうような、それは突拍子もない出来事が続くのだけれど、ちっともドタバタしていない。しだいに、ああ、それもありなんだと、のんびりと納得する。
オルガのおおらかな(なんてポジティブ!)受け止め方のせいかもしれない。


そもそも、キオスクから出られなくなってしまったところから、困ったというよりも、それはそれで一つの快適と言えないこともない、と思うほどに、オルガの生き方はポジティブだ。
大きなオルガのささやかな暮らし方がかわいらしいな。


賑やかな色の絵本だけれど、各色が原色よりもちょっと抑えた感じで、色とりどりの雨が降っているみたいで気持ちがよい。絵で知らせてくれる沢山の情報をページの中からみつけるのが楽しい。
くすくすと笑いながらページをめくっているうちに、おおらかな幸せが寄せてくる。