『クリスマスのあかり』レンカ・ロジョノフスカー/出久根育

クリスマスのあかり チェコのイブのできごと (世界傑作童話シリーズ)
レンカ・ロジノフスキー(文) 出久根育(絵) 木村有子(訳)
福音館書店

 

フランタのお父さんが作ってくれた美しい木のアドベントカレンダーの一番最後の引き出しから出てきたのは、美しい小さなベルだった。これは、ちいさなイエスさまを呼ぶベルだ。
今日はクリスマス。
チェコのクリスマスでは、子どものもとに、ちいさなイエスさまが贈り物を届けてくれるのだそうだ。(フランタは、ベルをもって、ちいさなイエスさまを待っていた)
また、この日、子どもたちは、ランプをもって教会へ行き、ベツレヘムの火をもらってくることになっている。


フランタも小さなランプと、献金のための幾枚かの硬貨をもって教会へ行く。家の窓から見えるすぐの教会だけれど、思いがけない冒険になってしまった。


フランタと出会うのは、年取ったドブレイシカさん。とても疲れて寂しそうな様子のドブレイシカさんにフランタは、ランプの火をわけてあげようとするのだけれど、ドブレイシカさんは「いいんだよ」と受け取らない。ドブレイシカさんはその時、とても悲しんでいたのだ。


フランタは、ドブレイシカさんの悲しみの理由を知り、なんとかしてあげられると思った。
ちいさなフランタの一途さが愛おしい。
フランタを巡る、近所の人たちもとてもいい。彼らにとって、フランタの小さな冒険に立ちはだかる障害を取り除いてやることは造作ないことだ。けれども、あっさりそうはしない。
ただ待ってやったり、ちいさな労働を要求したりする。
フランタが自分で道を切り開くのを、みんな大切に見届けてくれる。彼らの忍耐強いやさしさをうけて、フランタの持って居るランプの中のあかりがいっそう美しく明るく思える。


フランタが、きょう、二度目にドブレイシカさんに会ったとき、その別れ際に、ドブレイシカさんは、先刻「いいんだよ」と断ったフランタの火を、「やっぱりわけてくれないか」と、ちいさなろうそくを差し出す。それはポットを温めるために使うつつましいろうそく。


ドブレイシカさんのろうそくに火がともった瞬間、わたしのなかにも何かがともった。
温かくて明るくて、美しいもの。
ちいさな子どもの真心の火だ。
ちりんちりんと小さなベルが鳴る。
ちいさなイエスさまの贈り物が、どんなふうにして、どんなところに届けられるのかわかったこと、それは私がもらったうれしい贈り物だった。