9月の読書

2016年9月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2086ページ

ろばのとしょかん コロンビアでほんとうにあったおはなしろばのとしょかん コロンビアでほんとうにあったおはなし感想
家の中に一冊も本がないのが普通、という地域がある。本もろばも私財、多くの危険に阻まれつつ一日掛りで本を届ける人がいる。あとがきの「読書には、形を変えて大きくなっていく力がある」という言葉が心に残る。「はるかとおい山のむこうでも、ろうそくやランプのあかりがきえませんでした」という言葉が心地よい。あちこち灯る本読む灯りが、星のようで美しい。
読了日:9月28日 著者:ジャネットウィンター
雨あがりのメデジン (鈴木出版の海外児童文学 この地球を生きる子どもたち)雨あがりのメデジン (鈴木出版の海外児童文学 この地球を生きる子どもたち)感想
慎ましやかに、ただそこに控えている小さな本は、身内にこんなに大きな力を秘めている。本、という存在が愛おしくてたまらなくなる。そして、本の渡し手に、本と人との出会いの奇跡を無条件に信頼する人の存在に、感謝します。バリオを見下ろす図書館が、カミーロのような少年たちの居場所となりますように、希望を運んでくれますように。
読了日:9月28日 著者:アルフレッドゴメス=セルダ
夜の歌―散文詩 (岩波文庫 赤 557-1)夜の歌―散文詩 (岩波文庫 赤 557-1)感想
読む、というより、夜を皮膚にまとうような気配を楽しむ。美しいな。しかもそれは、遠いところではなくて、たぶんわたし自身の身の周りにもある、わたし自身の中にも、探せばみつかるかもしれない美しさ。孤独でいることの充実、孤独だからこそ研ぎ澄まされる珠のようなものに触れる嬉しさ。
読了日:9月27日 著者:フランシス・ジャム
月を見つけたチャウラ―ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫)月を見つけたチャウラ―ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫)感想
ほとんどの物語には狂気がこびりつき、本来かなり陰鬱であるはずだが、バカバカしいほど陽気な声でなぶる。けれども、不思議に不快なままに終わらない。一番最初に読んだ『月を見つけたチャウラ』の余韻がこの本一冊読み終えるまで続いていたのだと思う。不思議な作品集。狂気と無限の喜びの世界とを同時に味わったような気がする。
読了日:9月24日 著者:ルイジピランデッロ
遊覧日記 (ちくま文庫)遊覧日記 (ちくま文庫)感想
百合子さんがHさんを伴って遊覧する場所は、ちょっと不思議。きっと私一人では立ち入ることがないようなそれらの場所、怪しく胡散臭いそれらの場所が、こうして、何か懐かしい光景に変わっていく。怪しさよりも、そこにほのかにこもるぬくもりや、ほのかにともる灯りが、余韻のように残る。
読了日:9月21日 著者:武田百合子
アルド・わたしだけのひみつのともだちアルド・わたしだけのひみつのともだち感想
背景の激しさ暗さは作者の怒りのように思えた。「わたし」はきっと必死でアルドを呼んだ。アルドは必死に答えてやってきた。ね、アルドがそばにいてくれてよかったね。そうしてね、いつかそっとアルドが「わたし」のそばを去っていく日がきますように。「わたし」自身も気がつかないほど、そっと。遠くで「よかったね」と言いながら、見守ってくれる日がどうかきますように。
読了日:9月16日 著者:ジョンバーニンガム
生まれるためのガイドブック (エクス・リブリス)生まれるためのガイドブック (エクス・リブリス)感想
少し冷静になって考えてみれば、「誕生」も「妊娠」も「受胎」も「愛」も、かなりグロテスクなものではないだろうか。その奇妙さ、というよりも気味悪さに、目をひそめつつ、見守り続ければ、見えてくる。美しい、と思うようなものが、祈りのようなものが、静かに生まれている。混沌のなかで、ほとんど希望と名付けたいようなものが、今生まれ出ようとしているのだと思う。
読了日:9月13日 著者:ラモーナオースベル
チャイナ・メン (新潮文庫)チャイナ・メン (新潮文庫)感想
華僑となった血族たちの物語。に、終わらない。この本は、大きなエネルギーの塊みたい。あるいは、大きな生きものみたい。人々は頑なである。と同時に、とても柔らかい。半死半生の日々。激しい差別。民話や伝説、幻想、法の変遷。残酷な場面も、心痛む場面も沢山なのに、朗らかといいたいくらいに運命を受け入れ、生き抜き、変容していく。誇り高く。これはなんなのだろう。
読了日:9月11日 著者:マキシーン・ホンキングストン
あおのじかんあおのじかん感想
少しずつ夜が深まっていく。世界中あらゆるところでの四季折々の夜。驚くほどたくさんの青い生き物たちが活動する夜。どのページもずっと青ばかりなのに、豊かな色彩に満たされているのを感じます。青ばかりなのに、なんて色彩豊か、表情豊か。夜の深まりとともに青い色はどんどん深みを増していく。夜のしめった空気を胸いっぱい吸いこんでじっとしていたい、と思う。
読了日:9月5日 著者:イザベル・シムレール
チャーリーとの旅チャーリーとの旅感想
気の合った犬と人間と、二人のおおらかで幸福な旅に同行した。途上で沢山の忘れがたい風景(見える物・見えないもの)をスナップ写真のように集めた。一言なりには言い表せないアメリカがぼうっと浮かび上がる。漠然と、だけど、それがいい。心から同意するのは、家に帰る喜び。帰ることが嬉しい家があるって幸せなことだね。そうして安心してまた旅に憧れることができる。
読了日:9月3日 著者:ジョンスタインベック

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