『本屋さんのルビねこ』 野中柊(作)/松本圭以子(絵)

 

本屋さんのルビねこ

本屋さんのルビねこ

 

ねこのルビは、モシモさんの本屋さん「本の木」の、本棚のほこりから生まれました。
最初は、とても小さくて、ネズミと間違えられたりしました。
魚屋さんのチップスねこと冒険して、大切なものをみつけました。
そうしているうちに、どんどん大きくなって、本屋さんの看板猫になりました。


ルビは思うのです。本の木ってどんな木だろうと。
モシモさんは言います。
「本が好きな人の心の中には、本の木があるんじゃないかな」
「本を読んでいると、心の中に育ってくる、自分だけの木」


モシモさんは、朝、お店を開けるとき、看板に手を触れてつぶやきます。
「もしも本の神さまがいるのなら、求めているひとが求めている本に、物語に、言葉に出会えますように」


ああ、この本屋さんなら、ほこりからある日、小さなねこが生まれるのも、不思議じゃない。
モシモさんの思いが、魔法みたいだもの、
それにこたえるようにやってくるお客さん(こたえるのはお客か店主か)の思いも、魔法みたいなんだもの。(たとえば、ここで、大切な本に再会したマルさんみたいに)


モシモさんみたいに、ルビも看板にそっと手を触れます。(ルビは看板猫だから)
「すばらしい一日にしようね」
 ルビの言葉も、モシモさんの言葉と同じくらい、真心がこもっている。
ルビとモシモさんのいる本屋さんを、わたしもいつか見つけられたらいいな。