鳥の物語 中勘助 岩波文庫 |
雁、鳩、鶴、鷹・・・居並ぶ12種の鳥たちが、一羽ずつ、オゴタイ汗の前にまかり出る。
これは、鳥が語った物語。
中国、日本、インド、旧訳聖書の世界、七夕などの説話や故事など、個々の鳥の生態や習性に絡んだ物語などを題材にしています。
しかも、それぞれが、その鳥でなければきっと聞かせられない物語になっています。
珠玉の、という言葉がふさわしい物語。
鳥からみたら、人の大事は、少し滑稽にも思えてくるし、
苦しんだり、貪欲に生きたりするものたちまでもが、なぜか、愛おしくも感じます。
権力や名声にこだわって起こる悲喜劇は、ドラマチックだけれど、ばかばかしくなってきます。
親子の愛情の深さ、せつなさがうたわれた物語、理不尽なことに対する赦しの物語は、しみじみと沁みてもきますが、
その反面、人の業の深さも同時にとっくりと味わってしまう。
『銀の匙』の繊細な美しさを思い浮かべて読んでいたので、鋭さに驚き、新鮮に感じました。
一番好きなのは、いかるの話。
いかる、四十雀、目白・・・と唄でしりとりでもするように、つないでいく唄が、好きです。
なんとなーく、あの響き(?)、土方 久功の絵本「ゆかいなさんぽ」を思い出します。
えのみ長い長い期間(三十年)に渡って少しずつ書き足し、書き足し、していった物語だそうです。作者が、この物語をどんなにか楽しみいつくしみながら書いただろう、と想像しています。
かやのみ
はしばみ
くるみ
ひえ ひえしいのみ
むくのみ
なんてん
こがき
ひえ ひえ
ひがら
四十雀
山雀
こがら
きび きびいすか
いかるが
頬白
ほあか
きび きび(以下略)