ツバメ号とアマゾン号(上下) 岩波少年文庫・全巻改訳

ツバメ号とアマゾン号(上) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ) ツバメ号とアマゾン号(下) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ) ツバメ号とアマゾン号(上)

ツバメ号とアマゾン号(下)
アーサー・ランサム
神宮輝夫 訳
岩波少年文庫


改訳、どうなるのかな。大好きな世界が壊れるんじゃないかと、正直、不安を感じていました。
手許に旧訳版を置いて、重箱の隅をほじくるようにして、いちいち違いを確認しながら読んでいました。
でも、それは最初だけ。あっというまに物語に引き込まれてしまいました。
全体的に、片仮名が多くなり、子どもたちの会話など、少し洗練(?)された印象があります。
それでも、『ツバメ号とアマゾン号』はやっぱり『ツバメ号とアマゾン号』で、探検家も海賊も、やっぱり探検家と海賊なのでした。
改訳とはいえ、旧訳の良さをそのままに残し、旧訳の味を大切にした本になっていることがうれしいです。
古くなった船を塗装しなおしたような新しい『ツバメ号とアマゾン号』も大好きな本になりました。
それは、やっぱり、この本の物語る、とって大きな力のせい。


とはいえ、わたしにとって『ツバメ号』といって思い出すのは、きっといつまでも、古いほうの本です。
初めて会ったのは、あの本だし、あの本から、たくさんのイメージが浮かび上がり、わくわくしながら、一緒に夏を満喫しました。
子どもと一緒に楽しんだ想像の冒険の世界もあの本と一緒。それだけ、あの本に思い出があり、愛着があるのです。
きっと、これから、岩波少年文庫版でツバメ号に出会う子たちは、この新訳にたくさんの思い出ができ、深い愛着を感じることでしょう。
そうして、いつまでも、ずーっとこの本が読み継がれていったら、素晴らしいです。
誰もがわりと気軽に手にとることのできる廉価な少年文庫入りは、だからとてもうれしいことでした。


神宮輝夫さんの少年文庫版のあとがきも、上橋菜穂子さんの解説も、とっても美味しいです♪
上橋菜穂子さんの解説「永遠の夏の光」には、そうなの、そうなの、と、ひたすら頷くばかり。


本を読んでいるうちに、猛暑の夏が、すがすがしい夏に変わったような思いです。
風をはらんで走る二艘の帆船が、この暑さを迎え撃つ勇気(!)をくれました。
夏はやっぱりランサムがいいです。
わたしの本棚にも、並んで走る二船のように、旧訳と新訳が並びました。
本の帯に付された言葉は「夏の光のなか 帆船は進む」
読み終えて、なお余韻が・・・。
続巻の刊行も楽しみです。


土人→原住民、屋形船→ハウスボート、操船用語はほとんど片仮名に。
船員名は、漢字に片仮名のふりがな。
「おどろき、もものき」は健在です。
「準備はいいか、ティティ」「準備よろし」は、「大丈夫」に。