宝島

宝島 (福音館文庫)宝島
ロバート・L・スティーブンソン
坂井晴彦 訳
福音館文庫


(再読)
最近は、本を読むそばから忘れていきます。こんなの、そう簡単に忘れてしまえるような本じゃないだろう、と思うような本まで。
だけど、子どものころに読んだ本って、なんでこんなに鮮明に残っているのだろう。
忘れていたり、記憶違いしているところもあるけれど、それでも、物語がいきいきと鮮やかに、映像を見るように蘇ってくる。
それは、子ども時代だけが持っている感性のせいか。
だから、子どものころに、これ大好き、と思える本にたくさん出会えたら、幸せかもしれない、と思います。
自分で読んだ本も、読んでもらった本も。


宝島にどきどきしたのは、いくつくらいのころだっただろうか・・・
大人になった今、この本を開くと、昔のどきどきを思い出します。
ジョン・シルバーはほんとに怖かったなあ。(今も怖いけど) 
はじめてブラックドッグやピューが現れた時の不気味なこと、
橋の下に隠れた母と子がいつ見つかるかとはらはらしたり、
謀反のにおいにどきどきし、リンゴの樽の中で悪だくみを聞いてしまう場面に感じたぎゅうっとした緊張感も思い出します。
こんなに古い作品なのに、このスピード感。
大きな盛り上がりや見せ場が、最初から最後まで、次から次に現れて、退屈する暇もなくて、
あらすじをしっているはずなのに、引き込まれました。
おもしろかった!
ジョン・シルバーがどんなに魅力的な敵役であるか、再確認。主人公さえ霞ませるほど。
主人公の命知らずで破天荒な冒険は文句なしに面白いけれど、一本足で大きな動きをしないシルバーの存在感。不気味さ。
シルバーが動くときは、ほんのわずかな動きでも、すべてが大きな転機で、すべてが印象的。
肩にとまったオウム「フリント船長」まで魅力的。


本の献辞が好きで、洒落た献辞に出会うと、得したような気分になるのですが、この本の献辞も素敵。
アメリカの紳士ロイド・オズボーンに」で始まる献辞は、茶目っけと温かさに満ちています。 
ロイド・オズボーンはスティーブンソンの義理の息子で、なぜ彼に捧げられたのかは、訳者解説に書かれていました。
また、巻頭の辞(?)「買おうか買うまいかと迷っている人に」がいい。
わずか数行の言葉に、冒険への憧れが募ります。買わなきゃね。


緑のオウム、フリント船長、八銀貨、黒丸、ベン・ガンの洞窟・・・これらの単語を追いかけて読んでいました。
先日読んだ『ツバメ号とアマゾン号』の余波です。覚えのある単語や、印象的な場面に出会うたびににっこりしてしまいます。
ナンシーたちが、『宝島』に夢中になり、なりきって遊び、
その物語『ツバメ号とアマゾン号』に誰かが夢中になり、なりきって遊び、
どこかで、また新たな物語が生まれる。
そんなふうに、長い時をかけて、イメージがしりとりのように続いていったら素敵だな、と思う。
古典『児童書』は、大人の古典とは違う道をたどりながら、脈々と次世代に受け継がれていくものかもしれません。