『空からやってきた魚 』 アーサー・ヒ゛ナード

中原中也賞受賞の詩人の初エッセイ集。
フランスとイギリスとアイリッシュの血が混じっているが、国籍はアメリカ。
イタリア語はミラノ訛りとクレモーナ訛りを使い分ける、住んでいるところは日本。
詩作はもっぱら日本語で。
  >「夜半の冬瓜を切りゐて母国は朝」
持ち前の行動力と好奇心、みずみずしい詩人の感性が書かせた、エッセイ集。
日本に住んではいるが、そこにしがみつくわけではない。
そして、この人の文章にはおしつけがましさがない。価値観の違う人をも受け入れる部屋を持っているようで、のびやかで、あたたかい。

少年時代、渓流釣りが趣味の父と良く出かけた。父は釣りに、自分は虫捕り。
12歳のとき、父を亡くす。父の残した釣り道具を筆者は持ってきて、日本の川で釣りをする。
学校へ行くことができなくなり、二日続けて休んだ時、母が話してくれた少女時代の話。学校を合法的(?)に休みたくて、毒ウルシの汁を体中に塗りつけたところ自分が考えていた以上に大変なことになった話。娘のやったことにあきれた父(筆者の祖父)が根こそぎウルシをひっこぬいて焼いてしまったが、彼もまたかぶれてひどいめにあい、娘と一緒に苦しんだ話。
ユーモラスで、時に荒唐無稽なこの人の文章のあたたかさの下地に、「家族」がみえる。

  >「新聞の勧誘くれば日本語の
       二の字も知らぬガイジンとなる」