2月の読書

2016年2月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2200ページ

石垣りん詩集 (1971年) (現代詩文庫〈46〉)石垣りん詩集 (1971年) (現代詩文庫〈46〉)感想
戦争や原爆や、公害や、貧困や…そういう単語にまとめようとしたら、お仕着せみたいになっちゃって、石垣りんの詩から一番遠いところにいってしまうような気がする。きれいな言葉も、甘やかな風景も、ない。むしろ、ざらっとして、ごつごつとして、怖いほど鋭いけれど、刃物は連想しない。むしろ使いこんだ道具。それこそ、母や祖母から受け継いだ鍋や釜のような。
読了日:2月28日 著者:石垣りん
14番目の金魚14番目の金魚感想
どんなにすごい研究もそのゴールは、「完成」ではないのだな、としみじみ思う。それこそ科学でなくても。なんでも。「我われの最大の責任は、よき祖先になることだ」噛みしめたい言葉に出会った。最初に出てきた13匹の金魚の話、タイトルの「14番目の」って、いったい何なのだろう。そう思いながら読んでいた。そういうことだったんだね、とわかったときは、爽快だった。
読了日:2月27日 著者:ジェニファー.L・ホルム
インディアナ、インディアナインディアナ、インディアナ感想
喪われたものがあまりに美しくて、一層苦い物語。それなのに、寓話のよう。手紙と今と過去と未来とが、読み手を心地よく揺する。最初のところで、ノアが開いている美しい聖書には、何人もの筆跡で、ノアの親族の人たちの生年と没年が書きこんである。もうすぐ、もうひとつの名がそこに刻まれるのだな、と思う。名前が鳥にでもなって一斉に羽ばたいてくれたらと思う。
読了日:2月22日 著者:レアード・ハント
いえでをしたくなったので (海外秀作絵本)いえでをしたくなったので (海外秀作絵本)感想
子どもたちが家の外へ出ていく。そこで、大きな冒険や小さな冒険をして、きっと何かしら宝物(ほんとは目に見えないかもしれない)を身につけて帰ってくるんだな、と思えば、なんて頼もしいのだろう。こんな「いえで」ができるこの子たちが羨ましいな、こんな「いえで」を見守る両親が素敵だな、と思う。
読了日:2月18日 著者:リーゼル・モーク・スコーペン
還れぬ家 (新潮文庫)還れぬ家 (新潮文庫)感想
認知症の父を支える三人のバランスはぎりぎりの綱渡りのよう。このどうしようもない、眼をそむけていたい所に「家族」というものがあるのだ、と感じる。ただ作者の真っ正直な筆による、一つの家族のありかたから、私の家族を、そして、親であり子である私自身を重ねていた。震災が思いがけない展開を強いる。生々しいと同時にどこか遠いような日々が『震災と言葉』に繋がる。
読了日:2月16日 著者:佐伯一麦
へんな子じゃないもんへんな子じゃないもん感想
彼女はアメリカの人と日本人の両方の目で見る。祖母と暮らした日々、日本の町や文化、習慣。そして政治、戦争責任や核について。切っ先鋭い刃物のようであるにもかかわらず、風が通り抜けるようなこの感じ。言いきった言葉にさえも、相手を受け入れようとする余裕のようなものを感じる。さまざま言葉が、すうっと彼女が昔暮らした祖母の家に戻っていくような気がする。
読了日:2月12日 著者:ノーマフィールド
ひとりの体で 下ひとりの体で 下感想
懐かしい人びとが次々に死んでいく中で、よみがえってくる高校時代は、苦しいのに甘やかで、苦々しいエピソードさえも、ただ懐かしく美しい。LGBTQ。と今は言うのだそうだ。どんどん変わる名称は、社会での位置づけもあやふやなまま好きなように転がされている人々そのもののよう。世の多数派たちの間に埋もれながら、息をしているあらゆる少数派のための物語だと思う。
読了日:2月8日 著者:ジョンアーヴィング
ひとりの体で 上ひとりの体で 上感想
誰よりも自由で解き放たれているとも言えるんじゃないかな。それなのに、なんて狭くて暗いところに閉じ込められているのだろう。「私」に気持ちを重ねて読むことで、はじめて少しだけ解ったような気がして情けない。一つ秘密が暴かれる度に驚き、同時に息苦しくなる。まだ隠されている秘密もあり気になる。すべてわかると、今よりもっと辛くなりそうだけど…やめられない。
読了日:2月4日 著者:ジョンアーヴィング

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