『パフィン島の灯台守』 マイケル・モーパーゴ

 

大西洋ウェスタンアプローチ海域を航行していた四本マストのスクーナー船ペリカン号が、大嵐で座礁したとき、一部始終を見ていたパフィン島の灯台守ベンジャミン・ポルストウェイトは、ひとりで、乗員乗客合わせて30人全員を救助したのだった。
乗客の中には五歳の「ぼく」もいる。
無口な灯台守のことを忘れられない「ぼく」は、その後何度も手紙を書くが、返事は一度も返ってこなかった。それには理由があったのだけれど。
「ぼく」は、学校を卒業した年に、思い切って、ひとりでパフィン島へベンジャミンを訪ねていくことにする。


他に人のいない世界は、周囲の雑音を消して、本当に必要なものだけが残っていくようだ。
互いに相手を慕い、必要としながら、相手を束縛しない。
老人と若者の交流は温かいだけ、心地よいだけ、ではなかった。


あいだに、戦争が入る。第二次世界大戦だ。
「最後には我々が勝ったと、だれもがいいました。
でも、ぼくにはわかりません。
 戦争に勝ち負けなど、あるでしょうか?」
という言葉が心に残っている。


作者による「あとがき」には、この物語をアラン・ウィリアム・レインに捧げると書かれている。
アラン・ウィリアム・レインは、「ペンギン・ブックス」の創始者だそうだが、特筆すべきは、その児童版として「パフィン・ブックス」を創始したことだ。これまでにたくさんの児童書を出版してきたそうだ。
「かれこそが、ほんとうのパフィンマン(パフィン守)です」と書かれている。
物語のなかの、沢山のパフィンたちが、違う姿に見えてくる。
本が鳥のすがたになって、子どもたちの手許へと次々に飛んでいきますように。