『ハートに火をつけないで』 ジャナ・デリオン

 

任務ちゅうにヘマをやらかしたCIA工作員フォーチュンは、身を隠す必要に迫られて、ルイジアナの静かな(退屈そうな)田舎町シンフルに、亡くなった叔母の遺産を整理しに来た、おとなしい(?)司書として潜伏しているところである。
ところが……シンフルに到着するなり、殺人事件に遭遇したのをかわぎりに、次から次へと、ややこしい事件に巻き込まれることになる。おまけに婦人会のナンバーワンとツーのアイダ・ベルとガーティという最高に元気な老婦人と意気投合したため、思いもかけずスリル満点の日々に突入するのである。どこが退屈な町なのだろう。


シリーズ四作目。
友人のアリーの家が放火される。それがきっかけで、彼女のまわりには次々におかしな事件が起こり始める。なぜ?
犯人はシンフルのなかにいる。もしかしたらよく知っている人物のなかにいるのではないか。
「湿地三人組の出番だ」となる。
事件の展開など、どうでもよくなるくらいに、三人の女たちの活躍(と失敗)に笑い、ぽんぽんと飛び交う軽口に笑い、かっかする保安官助手カーターに聞かせる嘘八百に、大いに笑う。
気になっていたカーターとフォーチュンの間に進展があったことも、今回の見どころのひとつだ。
ある面では、超がつくくらいに凄腕のフォーチュンが、別の面では、幼い子どもよりまだ幼い、というアンバランスが楽しいけれど、時々、寂しくなってしまう。酷い育ち方だと思うのだ。


「シンフルへ来てから、わたしは何人も敵をつくっている」とフォーチュンは言う。シンフルに到着してまだ三週間、というのに、あまりにいろいろな事件がありすぎたのだ。
小さな田舎町で、短期間にこんなに怪事件が発生するなんて……ここは、ほんとうに静かな田舎町なのだろうか。
それとも、フォーチュンがここにやってきたことが関係しているのか、何かの罠が?……そう思うと、関係者たちが、次から次へと怪しく思えてしまうのだけれど。


このシリーズはすでに二十作目が出ているとのことで、びっくりしている。
当初は、夏の間だけシンフルに潜伏のはずのフォーチュンだけど、二十作目では、彼女の身辺はいったいどうなっているのだろう。
まずは、次の巻を楽しみに待ちたい。