『そばかすの少年』 ジーン・ストラトン・ポーター

 

グランドラピッズ木材会社の飯場があるリンバロストの森にやってきた少年は、そばかすと名乗った。
彼は、赤ん坊の頃に、片腕を切り落とされた状態で孤児院の前に捨てられ、自分の本名さえ知らなかった。
彼は、残酷な里親の元を逃げ出して、働き場所を探していたのだった。
支配人のマクリーンは、森の見回りと守りをする人間を必要としていた。もっと屈強な男を考えていたのだが、目の前の少年に親しみを感じ、彼を雇うことにした。


朝昼晩、そして、季節ごとにその姿を変えていく森は美しい。けれども、危険な所でもある。
最初、森に不慣れなよそ者として死ぬほど恐ろしい思いをしたそばかすだったけれど、徐々に森に馴染み、森は、懐を開いてその美しさを存分に見せてくれる。
彼が「ぼくのニワトリ」と呼ぶ、たくさんの鳥たちや虫たちとも仲良くなっていく。
森は彼の「部屋」にもなる。


そばかすを巡る人々も魅力的だ。この孤独な少年を実の息子のように深く愛するようになるのは支配人マクリーンはもちろん、彼の下宿先でもある御者長ダンカンの一家もだ。
それから、鳥の写真を撮るために頻繁に森にやってくる研究者バード・レディと少女エンジェル。


怖ろしい事件も起こるけれど、何よりもこの美しい森と愛情深い人々とが交互に働きかけて薄幸の少年に息を吹き替えさせていく様子に、心満たされていく


私は、子どものときにそばかすに出会った。初めて読んだ上下二段組の本に戸惑ったけれど、大人になったようで誇らしかった。夢中になって読んだ大好きな本でした。
今、古典新訳文庫ですごく久しぶりにそばかすに再会して、子どもの頃の読書の嬉しさを思い出しています。


子どもの頃のわたしが気がつかなかったのは、自分の出自を知らないことの辛さだと思う。
自分の根っこが見えない辛さ。
そんなことより、今のあなたが大事なんだよ。そうまわりが思えば思うほど、本人は自分の苦しさを明かすことができなくなってしまう。
父は、母は、どういう人だったのか。
自分はいったいどういう土壌に撒かれた種なのか。
これは、自分の知らない、自分の根を取り戻す物語ともいえるかもしれない。
自分がこれから根をおろす土壌を選び取るためにも。