『ロビンソン・クルーソー』 ダニエル・デフォー

 

 

ロビンソン・クルーソー』は、これまで一度も読んだことがなかった。
あまりに有名だし、なんとなくあらすじを知っているような気がするし、読んだことがあるかどうか、なんて、あまり気にしていなかった。
そんなわけで、これが初読みの『ロビンソン・クルーソー』だということに自分でも驚いている。


読んでみれば、思った通り、わくわくする海洋冒険物語だ。
ことに、無人島にただ一人で流れ着いたのち、時間をかけて、住居(城であり要塞であり)を整えていくところ、生活に必要なものを試行錯誤しながら揃え、充実させていくところなど、とても好きだ。


親の願いをつっぱね、気ままに放浪したあげくに打ち上げられた無人島で、寂しい暮らしを余儀なくされた彼は信仰に目覚める。彼の暮らしは神への感謝のうちにあった。
思い出すのは、子どもの頃から慣れ親しんだ『ハイジ』の全訳を始めて読んだ時に感じた「こんな話だったんだ……」という思いで、いま、また同じような思いを持った。
物語は、神を称える言葉に満ちていた。たぶん、これは、冒険の物語であるとともに、信仰の物語でもあったのだ。


孤独な島暮らしであったが、ロビンソンの日々は充実していた。
一日の労働の後に、ちっぽけな家族(犬と猫と鸚鵡と)とともに夕食の席につく彼は、「この島の王であり、君主だった」
寂しい暮らしではあったし、不便で苦しい生活であったはずだが、彼は、神の見守りの内で、満ち足りた日々を過ごしていたのだ。
やがてイギリスに帰ることができて、遺してきた資産が彼のもとに戻った時、「島で静かに暮らしていたときと違い、今では心配すべきことが山のようにあった」という。
幸福について、つくづくと考えてしまう。


ところで……
彼がイギリスに帰還した後のかの島の事が気になっていたが、それも書かれていて、ああ、そういうことになったのか、と安堵した。とはいえ、それで納得できたわけではない。
あの、すぺいんじんたちのことは、なぜ当初の予定どおりにならなかったのか、多いに気になっている。