『真夜中のちいさなようせい』 シン・ソンミ

 

熱にうなされた真夜中、男の子は、枕元から聞こえる小さな声に目をさます。
看病につかれたママは、男の子の横でうつらうつら居眠りをしている。
「あたしたちが ママのかわりに かんびょうしてあげる」
と言ったのは、手のひらに乗るくらいの小さな人たち。
「あたしたちは ようせいよ」
おそろいのチマチョゴリを着た妖精のなんと愛らしいこと。
大きなスプーンを肩に担って薬を注ぎ、二人掛かりで男の子の額にあてるタオルを畳んでいる。
寝入ったママを起こさないようにそうっと。
「……しばらく あわないうちに すっかりママらしくなって」という妖精の声に男の子は驚いて尋ねます。
「ぼくの ママをしってるの?」


あれあれ。
表紙の女の子の着ているチマチョゴリは、男の子の横で寝入っているママが着ているものとおなじだ。


妖精と人の時間の流れはずいぶんちがうみたい。
人は妖精に比べれば、あっというまに大きくなってしまう。子どものころの友だちのことも、あっというまに忘れてしまうのは寂しい。
でも、ほんとに忘れてしまったのかな。


大きい人たちと小さい人たちと、猫と、それからどうしてそうなったのかわからない小さい人と……が、仲良く遊ぶ空間のなんと明るくて美しいことだろう。
妖精も子どももチマチョゴリ姿なのがかわいらしい。
チマチョゴリ姿なのに、動きが現代っ子ふうなのがかわいらしい。
かわいらしいのに、匂やかで気品がある、と思うのだ。


ここに私も入れてよ、というよりも、壊したくない宝物を見つけた気もちで、そうっと眺めていたい。


色も絵も、描かれる情景も、繊細で美しい絵本。
これは「ようせい」シリーズの一作目にあたるそう。
チマチョゴリのようせいたちの話をもっと読みたい。どうか二作目も日本語で読めますように。