『小さな心の同好会』 ユン・イヒョン

 

十一の短編。
なんとも多彩なジャンルである。現在韓国が舞台の物語かと思えば、SFあり、ファンタジーあり。未来に、異世界にと、未来に、異世界にと、縦横に物語は駆け巡る。
作品ごとに大きく振り回されて、目がまわりそうだ。


この作品集には、一貫したテーマがある。漠然と感じるのは、「みんな」のなかで暮らしながら、自分がなんらかの形で「みんな」と違うことに気がついてしまった人の、どうしようもないくらいの孤独だ。
「みんな」は、少数派(あるいは一人、または異種)に対して鈍感だ。気がついているのに、存在を無視することもある。ものわかりのよい笑顔で迎えながら、何一つ理解していないこともある。
足並み乱すもの、として蹴散らされたりもする。体よく利用されることもある。


恋もするし、物語もつくる。夢見て学んで、打ちひしがれる。怒って泣いて失望する。懸命に暮らし、時にさぼる。普通に生きている人なのだ。
それなのに、普通じゃないように思わされるのは、そこに「みんな」という塊があるから。
「みんな」と違う人になりたい、なんて思ったことはないのに、そうなってしまった。どんなに居心地悪くても「みんな」のなか以外に居場所はないのだ。
物語のなかのそれぞれは、それぞれの世界で、こんなにも苦しんでいる。
それがどういうことかわかるか、と手を変え、品を変え、せめて、物語の中で追体験してみて、と差しだされた。
苦しくて痛くて……ほのかに、優しさによく似たかなしみを。


「わかんない」とある人がいった。
「わかんないことは、そのままわかんないって言えばいいのよ。多分それって、私たちがいいとか悪いとか言えるようなことじゃないの」
私は、この言葉が好きだ。
わかったふりなんかしない。そして、「わかんない」は、「わかりたい」「わかるようになりたい」に開かれている、と思うから。
足りないかもしれない。全然足りてない、と思う。でも、少しずつ、わからなかったことをわかっていきたい、そう思っている。
そして、別の場所で私自身が、もしか「みんな」と違う存在になったなら、そう言ってもらえたら少しほっとする、と思う。