『つるかめ つるかめ』 中脇初枝(文)あずみ虫(絵)

 

つるかめ つるかめ

つるかめ つるかめ

 

 

どこかに身体をぶつけたり、転んだりして、わあっと泣きだした子どもを、抱きあげて、おまじないをとなえたものだ。痛い所をなぜながら。
「ちんぷいちんぷい、いたいのいたいの、とんでけー」
これだけで、子どもはぴたりと泣き止んで、膝を滑り降りて、遊びの続きに戻っていった。
不思議だねえ、おかしいねえ。おまじない、効いたよねえ。


きっと私も、小さい時に、誰かのお膝の上で「いたいのいたいの……」のおまじないをしてもらっていたんだ。
おまじないが効いたのか、抱きしめられたのが効いたのか、撫ぜてもらったのが効いたのか……「おまじない」にまつわる安心の気配が、きっと泣いている子を元気にしてくれるのだろう。大丈夫、大丈夫、と。


かみなりが鳴ったら「くわばら くわばら」
地震がきたら「まじゃらく まじゃらく」
大風吹いたら「とーしー とーしー」
いろいろなおまじないがあるものだ。どの言葉も、波立つ心を鎮めてくれる。大丈夫を約束してくれる。
小さな声でわたしは自分に向かって唱えてみる。「つるかめ つるかめ」
心配が消えるわけではないけれど、ちょっと落ち着こうか、と思えてくる。不思議不思議……。
小さい時にわたしを抱いて、安心のおまじないを聞かせてくれた、たくさんの声を思い出す。
だから、わたしがしっている子どもたちに、一生懸命おまじないをかけてあげる。だいじょうぶ、だいじょうぶ。
大きくなっても、小さい時のおまじないが、効いていますように。ちょっとだけでいいから。