「おばさんには、
みえて……ない、みたい」
見えない存在にされている人たちって、いるよね。ちゃんといるのに、生活しているのに、誰の目にもとまらない。
くろいの。動物なのかな、人なのかな、妖精みたいなものなのかな。ほんとは、名前だってあるだろうに、「くろいの」
最初、くろいの、に、主人公(?)の女の子を通して出会ったとき、私は、不気味だな、と思ったし、ちょっと怖かった。
女の子は、いつも出会う、くろいのが、気になっていて、ある日、声をかける。あとをついていく。
すぐ近くにいても見えていないひとたちのなかで、この女の子は、くろいのがみえる。
なんでみえるのだろう。(なんで、見えない人たちがいるのだろう)
ほんとは誰もが見ようと思えば見えるんじゃないか。見えないのは、思いこみや偏見のようなもので、目が曇らされているからじゃないか。
この子は、見えるものを見えたとおりに見ることができる子なんだろう。
そういう子だから、くろいのが、恐いなんて思わないのだ。
見える世界も、感じる世界も、垣根がなくて、ぐんと広いのかもしれない。
くろいのは、こんなふうに 屈託なく声をかけてくる子を待っていたのかもしれない。
ずっとずっと待っていたのかもしれない。
くろいの、いるよね。
違う呼ばれ方をしているかもしれない。
違う姿をしているかもしれない。
見つけてほしい、声をかけて欲しい、そう思いながら、待っているような気がする。
くろいの、恐いなんて思ったことがちょっと恥ずかしい。素敵な人なのだ。
裏表紙のくろいのが、かっこいいんだよ。