12月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2710
エヴリデイ (Sunnyside Books)の感想
これ以上孤独な人生があるだろうか。もし、世界中Aのような存在なら、Aは人生を謳歌しただろうに。(そこに私のようなのが紛れ込んだら異分子としてきっと恐ろしく苦しむだろう) 実体のいらないメールがあってよかった。その一方で相手の実体に触れたい思い。人と人が理解し合おうとする時、外側だけでも内側だけでもだめなのだろう。
読了日:12月28日 著者:デイヴィッド レヴィサン
この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)の感想
しごとはゆるい、人間関係は温かい。でも、ほのぼのとした雰囲気に紛れ込む名指しがたい不思議な感じがずっと気になっていた。やがて「私」が望む仕事の内容も働き方も、だんだん静から動、内から外へと変わってきている事に気がつく。何かが始まりかけている。楽しみなのか不安なのかわからないけれど、わからない事は面白いと思う。
読了日:12月26日 著者:津村 記久子
クリスマスのあかり チェコのイブのできごと (世界傑作童話シリーズ)の感想
ちりんちりんと小さなベルが鳴る。ランプの中に小さな灯りがゆれる。火がともった瞬間、私のなかにも何かがともった。温かくて明るくて、美しい火がともされた。ちいさなイエスさまの贈り物が、どんなふうにして、どんなところに届けられるのかわかったこと、それは私がもらったうれしい贈り物だった。
読了日:12月24日 著者:レンカ・ロジノフスカー
言葉と歩く日記 (岩波新書)の感想
「外国語を学ぶのは、実際に使うためだけではない。外国語を勉強したことがなければ、母語を外から眺める事が困難になり、言語について考えようとした時にそれがなかなかできない」心に残る言葉だ。言葉って本当に生きもののようだ。身をくねらせて大きな生きものが踊っている。
読了日:12月22日 著者:多和田 葉子
黄金時代の感想
子どもの世界の掟と大人の世界の掟との間には、オリュンポス山ほどの隔たりがある。大人の側から見れば、仰天するような悪事の数々にしかみえないのだけれど、下界(!)では素晴らしい叙事詩が日々進行しているし、涙を振り飛ばして笑い転げるような喜劇も起こり、抒情的な美しさが満ち満ちている。
読了日:12月16日 著者:ケネス グレアム
こゝろ (角川文庫)の感想
丁寧で赤裸々な告白が胸に迫る。一方で、違和感も。こんな手紙を残された者はどうすればいいのだろうか。読めば読むほど、先生という人間の身勝手さが浮き彫りになっていく。罪というなら、この手紙こそ、とても罪深いとわたしは思ってしまう。いっそ黙って胸にしまっておいたほうがよかったのに。
読了日:12月11日 著者:夏目 漱石
ふたりの世界 5 ウェールズの家族の感想
物語はこの巻で完結だけれど、ケヴィンとセィディーはまだまだ先の見えない旅の途上にいる。これで本当におしまい?いや、おしまいになんかなるはずがない。命が続く限り様々なことが起こる。どこまでも続いていく。解決のしようもない深刻な問題も無数に。家族の姿も変わっていくだろう。二人は旅を続ける。きっと元気に続けていく。
読了日:12月09日 著者:ジョアン リンガード
ふたりの世界 4 チェシャーの農園の感想
赤ちゃんのブレンダンを中心にして、ケヴィンもセイディーも、父と母の顔になっていた。挑むより、大切なものを守る。そういう暮らし方を選び始めていた。少しずつ、自分たちの望む生活が、はっきりし始めてきた時でもある。さらに子犬のタムシンを得て、一家の姿はずいぶん変わってきた。もう彼ら、「ふたり」の世界、じゃない。
読了日:12月06日 著者:ジョアン・リンガード
ふたりの世界 3 ロンドンの生活の感想
結婚して二か月。このまま別れ別れになってしまうしかないのか、という深刻な事態を、ケヴィンとセイディーは、それぞれの場所で、それぞれのやり方で乗り越えていかなければならない。この苦しく不安な日々が、二人にとって「いい時代」であった、と、あとになって思えるようになったらいいなあ。
読了日:12月05日 著者:ジョアン・リンガード
ピアノ調律師 (末盛千枝子ブックス)の感想
少女が感じる「おもしろさ」「美しさ」は、あまりに美しくて、かけがえがなくて、 私は、ただこの小さな絵本を読んでいるだけで、しみじみと幸せな気持ちに満たされる。おじいちゃんと孫娘の毎朝の習慣も好きだ。時を経て役割が変わったとしも、この屋根のしたには、幸福な、腕のいい二人のピアノ調律師が暮らしている。
読了日:12月04日 著者:M.B. ゴフスタイン
小川の感想
息苦しいはずの文章は、むしろ明るい。ただ「わたし」の中の血の川が覚えている景色を、血の中に混ぜ込まれた記憶を、思いだすままに、風景画を描くようにして文章で描こうとしているよう。この本を読む間、私もささやかな川の音を聞き、満たされていた。彼女の小川が、わたしの中の小川に静かに流れこんでくる心地よい音。
読了日:12月02日 著者:キム・チュイ
読書メーター