12月の読書

2016年12月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1677ページ

マルの背中マルの背中感想
夏休みの数日間の出来事で、何かが劇的に変わるわけではない。頼りになる大人は最後まで出てこないし、少女の日常にエールが送られるわけでもない。物語は、おためごかしの救いも、無責任な希望も退ける。このように生きている、生き延びようとしている子どもがここにいる。
読了日:12月25日 著者:岩瀬成子,酒井駒子
少年少女のための文学全集があったころ少年少女のための文学全集があったころ感想
懐かしくて嬉しい本。同時に寂しさも。子どもの本には、今からだっていくらでも出会えるが、あの時と同じ気持ちで本を読むことはもう絶対にできないのだ、ということを確認してしまった。少年少女の文学全集(「おおまかな海図」という言葉がいい)が廃れていったことについて。私自身、子どもの本棚に抄訳はいらない、と考える狭量な親だったことを思い、恥ずかしくなる。
読了日:12月22日 著者:松村由利子
新訳 チェーホフ短篇集新訳 チェーホフ短篇集感想
チェーホフ初心者にはありがたい丁寧な解説付き。しかもかなり茶目なつくり。この本から受けるチェーホフの印象は、一言でいえば「シュール」と言えるような気がする。大人も子どもも貧乏人も富裕者も、そろって閉塞感を感じている。光はどこにもない。だったら居直るか。そういうシュールさ、と思った。暗いけれど、この暗がりはひねくれていて、みじめな感じはない。
読了日:12月18日 著者:アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ
いのるいのる感想
世界じゅうで、人びとが祈っている。祈る姿は美しい。ページを繰るごとにあらわれる写真を見ていると、心が鎮まってくるようで、この本がそのままひとつの祈りの形なのではないか、と思う。なぜ人はいのるのだろう。何をいのっているのだろう。いのるとはどういうことだろう。問いかけは、本から自分自身に向かう。
読了日:12月13日 著者:長倉洋海
八十二歳のガールフレンド八十二歳のガールフレンド感想
思い出って、もうここにいない人が、残された人と混ざり合うことなんじゃないだろうか。出会った人や書物が、その時の風景と重なって、ぼんやりと浮かび上がる。その人や書物を真正面ではなくて、斜め後ろから光をあてて浮かび上がらせるような感じだった。良い読書の時間を過ごしました。
読了日:12月12日 著者:山田稔
すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)感想
息苦しいまでに暗い世界だけれど、この世界には、点々とともる名指しがたいようなものがあり、文章の狭間から、暗闇を押しわけて立ちあがってくるよう。遠い過去から、時も距離も超えて、ずっと注いでいた光。それは、過去にも未来にも、遠くまで光を投げかける。その光に照らしだされる光景ひとつひとつが、一瞬一瞬が、思いがけない贈り物のよう。
読了日:12月9日 著者:アンソニードーア
ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)感想
神話って、膨らませればすごくおもしろくなるはずの物語のあらすじのよう、と思っていた。この本は、古今の膨らませ方について書かれた本と思う。その膨らませ方から、その時代や人の心情を読むことも、おもしろい。シュリーマンにはなれなくても、子どものころの読書が、どんな光でこの道をずっと照らしていてくれたのか、と思えば、幸福な気持ちになる。
読了日:12月2日 著者:阿刀田高

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