『ルゥルゥ おはなしして』 たかどのほうこ

ルゥルゥおはなしして

ルゥルゥおはなしして


まずは、たかどのほうこさん自身によるイラスト、挿絵が楽しいのです。
「お話」が全部挿絵の中にすまして描かれているのだから、さあ、この絵のどこ(だれ)がどんなふうに動きだしてどんなお話になるのかな、とあれこれ考えるのだ。


子ども部屋のドアにぶらさがった鈴が、リンッと鳴ると、棚の上のお人形やおもちゃたちは、うれしそうにざわざわします。
彼らの大好きなルゥルゥが飛び込んできます。
ルゥルゥは、棚から順番にお人形たちを下ろしながら、お話を始めます。
何度も繰り返すお気に入り(ルゥルゥの? お人形たちの?)のお話だったり、
その時たまたま見えたものから思いつき、ふくらました新しいお話など。
全部で三つ。
どれもお人形たちに聞かせるために。
だって、みんな、自分や仲間が出てくるルゥルゥのお話をそれはそれは楽しみにしているんだもの。


この本の中には大人は一人も出てこない。
ルゥルゥのことが大好きな大人だったら、きっとルゥルゥのお話をすごく聞きたいだろうけれど、その「聞きたい」はきっとお人形たちの「聞きたい」とは違うはず。
お話そのものを楽しむというよりは、きっとお話をしているルゥルゥという女の子を、声の調子や表情、しぐさまでまるごと楽しみたくなっちゃって、でも当のルゥルゥにはそれではきっと不本意なことだろう。
お話をする人にしてみればね、きっと、お話そのものだけを楽しみに待ってほしい、お話の中にすっと入りこんで存分にどきどきしたりわくわくしたりしてほしいじゃないの。
お気に入りのお話だったら何度も何度も聞きたい、と言ってほしいし、新しいお話の続きを楽しみに待ってほしい、そして、お話の中でいつ自分が登場するかな、とドキドキしてほしいじゃないの。


ルゥルゥ自身がきっとそのようにして、だれかにたーーっぷりお話を聞かせてもらって大きくなったんだろうね。
お人形たちのわくわくやどきどきは、全部ルゥルゥ自身が経験したことなんだろう。
のびやかにお話を広げていくルゥルゥと、それを楽しみにしているお人形たちを眺めながら、幸福な子ども部屋の光景にほのぼのしてしまう。
ちょっと懐かしいような気がするのは、自分が子どもだったころの幸福が蘇るからかな。自分のよく知っている子をこっそり見ていたころの幸福が蘇るからかな。