- 作者: 荒井良二
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2011/12/02
- メディア: 単行本
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友人の娘は、絵本のページを指さしながら、
この絵の町は自分が生まれ育った町だという。建物の名前も知っているという。
彼女のママは、この絵本の風景は全部、故郷の風景だという。
山や川、湖、田んぼ・・・。どの絵からも地名がすぐに浮かぶのだという。
どこもみんな懐かしいのだ、という。
友人母子の言葉を受けて、改めて絵本に見いる。一枚一枚の絵を見ていく。
もしかしたら、ここは本当に彼女たちが戻れない故郷かもしれない、
と思いながら、眺めていると、ふいにこみ上げてくるものがある。
いやいや、そうともいいきれない。
ここは。
よく知っている。
ここは、私の生まれ育った町だ。わたしの故郷の見なれた風景ではないか。
懐かしい風景が、子どもの日の終りない楽しさが、ふいに蘇ってくる。色と光の乱反射の中で。
もしかしたら、だれにとっても「懐かしい」と感じさせ、
だれにとっても「ここは自分の故郷」と感じさせる、魔法のような風景なのかもしれない。
朝になったら窓を開ける。
わたしも、ここから呼びかけよう。
荒井良二さんの言葉にならって、「きみのまちははれてるかな?」と。
これは、今朝、窓を開けている地球の上の人たちへの挨拶だ。
遠くから同じ問いかけが、挨拶になって、こちらの窓辺にも届く。
そして、見なれた(でも、ほんとうはちっとも見ていなかったかもしれない)風景を俯瞰しながら、答えるのだ。
「だから、わたしは(ぼくは)、ここがすき」と。
風景は朝日に洗われる。
色が光になり、爽やかな空気になり、風景の上に散らばり、踊っている。
朝になったら、窓をあける。
ごく当たり前に繰り返す日常。
だけど、この窓から見えるものは、
今この瞬間ここにいることの喜びと、誰かと繋がっている不思議と、
これから始まる一日への期待・希望だ。