5月の読書

5月の読書メーター
読んだ本の数:23冊
読んだページ数:4623ページ

遠い水平線 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)遠い水平線 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
思いがけない方向から光が来たような気がして、ふふっと笑ってしまう。この先、何がおこるかわからないのよ、ほんとは。ここまでの旅の意味だって、ほんとにはわかっていないのだけれど。それでもこの抜けたような清々しさが気持ちがいいじゃない。まいったなあ、と思うじゃない。生きた人間と死体と。境界線が揺らぐ。
読了日:05月29日 著者:アントニオ タブッキ
星を数えて星を数えて
少しグロテスクで、透明感のある美しさが印象的。息をとめていないと空気の中に溶けていってしまいそうなくらいのはかない一瞬一瞬。「ぼく」は作者自身だろう。全部このとおりでないだろうが、作られた物語のほうが、よりいっそう真実を映しだすこともある。この一瞬一瞬の輝きが、かけがえなく思えてくる連作短編集。
読了日:05月28日 著者:デイヴィッド・アーモンド
ティンカーズ (エクス・リブリス)ティンカーズ (エクス・リブリス)
死に至るまでに、出会ったあれこれの風景。大きな出来事であったり、一瞬垣間見えたものであったり、だれにも言わずに心の中にしまっていたことであったり。自分にだけ意味のあるあれこれの細切れを、いじくりまわし、修理を繰り返し、一筋縄ではいかない人生が、美しい詩になっていくような気がする。
読了日:05月27日 著者:ポール ハーディング
旅の絵本 (1973年)旅の絵本 (1973年)
静かさのなかで、際立つ文章、言葉の美しさ、そして、ゆっくりと言葉の間から画像、色、音が立ち上ってくるような気がします。それから初めて、あ、ここに空気がある、呼吸してたんだっけな、と気がつくし、そうだ、時間も流れていたんだ、と気がつくような。この旅は、静寂に出会う旅なのかもしれません。
読了日:05月25日 著者:串田 孫一
怪物はささやく怪物はささやく
物語は暴れ、容赦なく打ち砕く。打ち砕くことで、決して砕くことのできないものを取り出すため、かもしれない。それができるのが、真実の物語なのだろう。コナーの物語であり、同時に怖ろしくも私自身の物語である。物語の力と、物語の力への絶対的な信頼とを見せつけられる。「物語は大事な意味を持っている」本当にそう思う。
読了日:05月24日 著者:パトリック ネス
かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)
家族(動物含む)の距離感が素敵。気持ちのよい風が通って行くような関係に、ほっとして、何がおこってもちゃんと付いていける、と思った。心に残るのは、かのこちゃんが「知恵が啓けた」ことを自覚するところ。第四章の「マドレーヌ、マドレーヌ・・・」には、心から唱和したいと思った。続きの物語があったらいいな。
読了日:05月22日 著者:万城目 学
あの川のほとりで〈下〉あの川のほとりで〈下〉
天使の死から始まり、天使の死で終わる。戸惑い、ショックを受けた最初の死を、最後にしみじみと丁寧に受け入れるまでに、わたしも物語の中を主人公たちと一緒に旅してきた。物語のさなかに、生きた天使が天から降りてきて、どこかでずっと力生きているのを感じながら。「事故の起こりがちな世の中」に明るい兆しではないだろうか。
読了日:05月21日 著者:ジョン アーヴィング
あの川のほとりで〈上〉あの川のほとりで〈上〉
ぽんと飛んで、少し引き返したところからゆっくりと追いついてきて…の文章が徐々に心地よくなってきた。一人をさすとは思えないたくさんの呼び名が代名詞代わり(?)の不思議な感覚にも慣れてきた。のっぴきならない事態なのに、明るい全うさが漂い、このままで…と祈るが、緊張が高まってきて下巻!
読了日:05月17日 著者:ジョン アーヴィング
ケニーのまどケニーのまど
七つのなぞなぞに対する七つのお話に、さらに難しくなったぞと頭抱えた。このお話のなかに、こんな答えが入っていたのか、ちょっと感動してしまった。七つめで考え込んでしまうことも、みつけた答えのさらに先に見せられたものが一層素敵な贈り物だったことも、とてもうれしい。願い続けよう、心をこめて。
読了日:05月16日 著者:モーリス・センダック
スコープ少年の不思議な旅スコープ少年の不思議な旅
箱の中には、窓があり、鏡があり、扉がある。いつまでも息をつめて見守っていたいような、または見ているのが怖くなるような空気感なのだ。その先に、世界がある。もしかしたら、この箱の中の部屋は、次の世界への入り口なのかもしれない。その世界をちらりと垣間見せてくれる絶妙な箱。この箱、作る、というより、旅なのだろうな。
読了日:05月16日 著者:巖谷 國士,桑原 弘明
大きな古時計の謎大きな古時計の謎
歌詞の意味を知って、歌への気持ちも少し改まったりもするのですが、ただしみじみと心にしまっておこう。そして、子ども(目の前にいる子ども・思い出の中の幻の子ども)といっしょに歌う。歌いながら、新しい物語を縫いこんでいく。情景をたしていく。そうやって、歌は自分のなかで豊かになっていくような気がする。
読了日:05月15日 著者:
春の数えかた (新潮文庫)春の数えかた (新潮文庫)
椎名誠さんが解説でこの本のことを「かしこい美人」の本と言われている。この「美人」はつんと澄ました美人ではなくて、親しみやすい愛きょうのある美人なのだ。世の中は、なんとたくさんの不思議に満ちていることか、と感嘆します。たくさんの不思議を踏みにじりながら暮らす鈍感なわたしでさえ。
読了日:05月12日 著者:日高 敏隆
ウエスト・ウイングウエスト・ウイング
どきっとしたり、はっとしたりする驚きは、ない。ただ、しんしんと、ひたひたと・・・なにか、ある。なにか、くる。文字がないぶん、妄想が限りなく広がってしまうのでしょうか。本を閉じても、やっぱりどこか落ち着かない・・・また最初からみたくなってしまうのです。それも怖いです・・・
読了日:05月11日 著者:エドワード ゴーリー
小さなトロールと大きな洪水 (ムーミン童話全集)小さなトロールと大きな洪水 (ムーミン童話全集)
太陽のない暗い世界に当時の世界の暗さが偲ばれる。ムーミンママが言う。「わたしたちは旅をつづけなければなりません。ほんもののお日さまの光のもとで、自分たちで家をたてようと思っているのです。」これだけを手に入れるために、小さな生きものは、冒険するのだなあ。
読了日:05月11日 著者:トーベ ヤンソン
供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
炎天下の街路をとぼとぼと歩いてきたら、思いがけなく目の前に冷えたレモネードを差し出された、そんな感じ。心に残る言葉「哲学は、真理のことしかいわないみたいでいて、じつは空想を述べているのではないだろうか。いっぽう、文学は空想とだけ関わっているようにみえながら、本当は真理を述べているのじゃないか。」
読了日:05月10日 著者:アントニオ タブッキ
超訳 古事記超訳 古事記
おおらかな明るい気が、体の中から湧き上がってくるのを感じています。命の始まり、国の始まりの物語は、あふれるような、はじけるような命の賛歌でもあります。人が、神に託されたものは、このようにおおらかに命を全うせよ、という指令のようにも思えます。生きよ、生きよ、と神話は謳っているような気がします。
読了日:05月08日 著者:鎌田 東二
薔薇の名前〈下〉薔薇の名前〈下〉
感想をネタバレにならずに書くなんて不可能だ。 物語は面白かった。だけど、それ以上に、まだ考え続けそうないろいろがある。(背景のいろいろをわかっていないので、妄想かもしれないけど) 抽象的な言葉は、どうとでも解釈できるだけに厄介だな。「笑う」ことができるって幸せだなあと、ふと思ったり。『薔薇の名前』の意味も。
読了日:05月07日 著者:ウンベルト エーコ
薔薇の名前〈上〉薔薇の名前〈上〉
中世の修道院で、次々、人が死ぬ。ミステリではあるけれど、当時のキリスト教世界の事情や勢力争い、異端審問の話…かなり奥は深そう。というより難しい。ちっともわかった気がしない^^ キリストは笑ったか、の論議が印象に残る。迷路のような文書館、魅力的(あんな図書館があったらな)さて、下巻へ。
読了日:05月05日 著者:ウンベルト エーコ
おいしく食べてきれいになる!野菜のたし算ひき算おいしく食べてきれいになる!野菜のたし算ひき算
食べ合わせの本です。合わせ方によって、食品の持つ栄養素をからだに取り込みやすくしたり。破壊してしまったり。加減乗除になぞら獲て教えてくれるので、解りやすい。あとがきで、食べ合わせを、人間関係に例えているのがおもしろかった。苦手な人ともうまくやる料理法もきっとある。野菜に学ぶところは大きい。
読了日:05月04日 著者:白鳥 早奈英
贋作に明日はない (創元推理文庫)贋作に明日はない (創元推理文庫)
賑やかな連中である。華やかで生きのいい会話が好き。ミステリは忘れよう。と思っていたが、終盤。一見無意味に、とっ散らかされた言葉たちがおもしろいようにぴたっと嵌るところに嵌るもんだねえ。そうして、やっぱり、どこか遠くで何もかもお見通しのあのご老人がにっこり笑ってウィンクしているような気がしたのでした。
読了日:05月04日 著者:ヘイリー・リンド
ふゆめ がっしょうだん (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん)ふゆめ がっしょうだん (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん)
こんなにかわいらしいのに、ほわんとした感じじゃない、しなやかな強さを感じる。なぜなら、きのめたちは、この顔の下に、春夏秋冬を生き抜く知恵と力を蓄えている。それを意識しながら、寒風のなかで、ぱっぱっぱっ、と歌っている。ぱっぱっぱは、歌声であり、きのなかの心臓の音。それに響き合う私の心臓の音。
読了日:05月03日 著者:長 新太
生きもののヘンな顔生きもののヘンな顔
笑ってる? ちがいます、怒ってるんですよー、力いっぱい。 童顔? 大きなお世話ですっ! ふふふ、ごめんねー。なかには、自然界で彼らに出くわしたら、思わずすくんでしまうかもしれない、ちょっとアブナイ皆さんも、こうしてアップの写真で集合すれば、みんなひょうきん者に見えてくる。
読了日:05月02日 著者:
耄碌寸前 (大人の本棚)耄碌寸前 (大人の本棚)
解剖室がらみのエッセイはちょっと苦手だったが、表題作『耄碌寸前』と『観湖楼始末記』 とても好きです。森於莵さんの耄碌ぶりは、なんと美しく上質な匂いがすることだろう。せめて、私も自分なりに美しく「耄碌」したいと思う。背伸びはしませんから。『観湖楼始末記』は、うつりゆく無常が、甘ったるくない文章で淡々と描かれているのがよかった。
読了日:05月01日 著者:森 於莵

2012年5月の読書メーターまとめ詳細
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