12月の読書

12月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:4511ページ
ナイス数:173ナイス

遺体―震災、津波の果てに遺体―震災、津波の果てに
死者何万人、と数にしてしまえば、見えなくなりそうだけれど、『遺体』はどんなに姿が変わっても、一人ひとりが尊い人である、ということを思い出させる。あまりに酷く痛ましい事実。極限状態。だけど、読んでいると、そういう言葉とは正反対の何かが力強くたちあがってくる。2011年最後にこの本に出会えたことに感謝します。
読了日:12月28日 著者:石井 光太
まつりちゃんまつりちゃん
まつりちゃんって本当にいたのかなあ。みんなの寂しい心、満たされたい思いが結晶してこんなに健気な小さな女の子が生まれたのではないだろうか。前半の、子どもたちが主人公の物語が好きです。子どもだったころの、忘れかけていた小さな気持ちのざわつきのようなもの、いつまでもひりひりする擦り傷のような出来ごとを、甘く苦く思い出します。
読了日:12月24日 著者:岩瀬 成子
きまぐれな読書―現代イギリス文学の魅力 (大人の本棚)きまぐれな読書―現代イギリス文学の魅力 (大人の本棚)
この本に出てきた文学者や書評家の名まえ、80パーセント(いや、90?)知らないのだけれど、たまーに知った名前が出てくると嬉しくて、まるで旅先で知人に会ったような気持ちになる。読んでみたいのはイザベラ・バード旅行記。好きな言葉は『あとがき』に。「私は直接役に立ちそうもないいろいろな本を遊び心で読むのが好きで…」 なんてすばらしい読書の愉しみでしょう。
読了日:12月23日 著者:富士川 義之
水晶玉は嘘をつく? (創元推理文庫)水晶玉は嘘をつく? (創元推理文庫)
ミステリだということを忘れるくらいに印象的な主人公だった。11歳なのにこんなに大人びてしたたかで(とてもおもしろい)、この子どんな大人になるのだろう、と一瞬不安になる。でも思わず見せる固い殻の下のやわらかな心、冷たいと思っていた家族の本当の気持ち・・・ああ、大人になった彼女に会ってみたいな、それ以上にもっともっと子どもの彼女のホラ話を聴いていたいな、と思ったのでした。
読了日:12月22日 著者:アラン・ブラッドリー
絵本の森でうまれたバッグ (MOE BOOKS)絵本の森でうまれたバッグ (MOE BOOKS)
とってもかわいい。わたしが持つにはかわいすぎる(残念…)けど、巾着、クッション、ピアノのカバー…などにして楽しみたい。モチーフの元になった本たちの小さな写真が気になります。半分くらいはもう手に入らない貴重な本なのでは? すごく欲しいと思っていた岩波文庫版『プラテーロ』がある! ううっ、垂涎です。
読了日:12月19日 著者:川角 章子
ピートのスケートレース (世界傑作絵本シリーズ)ピートのスケートレース (世界傑作絵本シリーズ)
『楽しいスケート遠足』の、運河を遠くの町まで滑って行くオランダの子どもたちの姿を思い出し、それから、フランク一家始め多くのユダヤの友を匿い支援したミープ・ヒースさんの「よきオランダ人」という言葉を思い出していた。 最後には思わず涙が出てしまった。嗚咽をとめることができなかった。赤い手帳。思えば、誰もが、目に見えない赤い手帳をもっているのかもしれない。どれだけたくさんの書き込みが残されているか、と感謝とともに振り返る。「よき日本人」でありたい。
読了日:12月19日 著者:ルイーズ・ボーデン
ダブリナーズ (新潮文庫)ダブリナーズ (新潮文庫)
せつないような、痛いような・・・でも最後には、沈み切った場所から、ふっと身体を上に持ち上げられたような感覚を味わう。少し苦い出来ごとさえも、別の些細な何かが混ざって、忘れ難い余韻に変わる。どれもいいけど、ダントツで好きなのは『アラビー』。解き放たれるような開放感と、暗がりに浮かびあがる明かりや喧騒が、魔法のように美しく、どきどきする。ほどよい湿り気とひんやりとした冷たさの闇が、ひっそりと寄り添う読後感が印象的。
読了日:12月17日 著者:ジェイムズ ジョイス
たのしいムーミン一家 (ムーミン童話全集 2)たのしいムーミン一家 (ムーミン童話全集 2)
長い冬を冬眠して過ごすムーミン谷の住民たちは、全力でこの短い夏を追いかけ、急いで楽しみつくそう、味わいつくそうとしているようにも思えます。ぎゅっと詰まったムーミン谷の夏。一番美しいのはこの季節が終わろうという瞬間。ムーミントロールの一番好きな時期だって。自然描写の美しさったらない。
読了日:12月15日 著者:トーベ・ヤンソン
ブタとおっちゃんブタとおっちゃん
この写真集のおっちゃんとブタたちの関係のおかしさったら。おかしくて、たまらなく愛おしい関係を、言葉で説明することはできない。でも、あえていうなら、これは一つの絆、約束かもしれない。人にもブタにも果たすべき役割がある。勤めがある。それを互いに了解し合っているように思える。そういう者同士の間にだけ生まれる余裕なのかも。やっぱり御託だなあ。うまく言葉にならない、言葉にしようとすると違ってしまう。しないほうがいいのかも。
読了日:12月14日 著者:山地としてる
抱擁、あるいはライスには塩を抱擁、あるいはライスには塩を
ヘンテコな家族の話なのですが、ひとりひとりが愛おしくて、読めば読むほどに近しい友人のように思えてくる。静かに流れていく年月は、夢のようだ。ここにいる登場人物みんなが、みんなで、全力で、必死で守ってきた「夢」なのだと思う。夢を見ていたのは、この「家」。家は、家族にとって帰りたい場所であると同時に出ていきたい場所。そして、いつの日も懐かしい場所であって、やっぱりいつか帰っていく場所かもしれない。
読了日:12月13日 著者:江國 香織
もっとおいしく、もっと知りたい やさいもっとおいしく、もっと知りたい やさい
野菜についてもっと知りたいけど、具体的に何を?と言われても困る…そんなわたしには、これ、すごく頼もしい本です。思い浮かべるの辞書です。辞書を読むのってほんとに楽しいんです。(そういうことが好きな人、いますよね? 仲間ですよね?) で、この本、「何かのために」という目的もなく、あてずっぽうにページを開いて、そこにいる野菜に出会うのが楽しい。あっちからこっちからの野菜話を読んでいるうちに、添えられた写真の野菜たちが、なんとなく誇らしげに見えてくる。
読了日:12月09日 著者:
本についての詩集 (大人の本棚)本についての詩集 (大人の本棚)
トルストイ孔子スピノザボーヴォワールニーチェ。星の王子様からサザエさんまで。のちの詩人たちが過去を見上げてうたっている。難しかったり易しかったり、大きい深い、自由だ。だって、全部本についての詩だものね。長田弘さんの序詩『世界は一冊の本』が好き。自分を取り巻く本(紙だけにあらず)がこんなにたくさんあることに幸福になる。
読了日:12月07日 著者:長田 弘
盗まれっ子盗まれっ子
とても面白かった。残酷でせつない物語であるけれど、そのまま終わらない。不思議な、それなのにとてもまっとうな成長の物語だった。そのまっとうさに打たれる。心に残るのは、森の美しさ。エニデイの読書への渇き、ヘンリーのなかからあふれてくる音楽に心が躍る。芸術から受ける感動もホブ・ゴブリンの存在も人の目から隠されている。でも、彼らが消え去ったら、私たちの世界も消えてしまうのではないか、という気がする。美しい物語だった。
読了日:12月05日 著者:キース ドノヒュー
マルテの手記 (新潮文庫)マルテの手記 (新潮文庫)
難しい。といいながら、少しずつ読むのは不思議に楽しかった。「もうついていけない」と投げ出すことなく読めたのは、物語にとりとめがないせいだと思う。これは宝探しのような読書でした。「死」は文字通りの死ではないのかもしれません。名声を憎むマルテの言葉から、「死」も、そして「愛」も、その逆、精神的な高みのように感じた。この世から離れた精神的な・・・とらえどころがないのだけれど、明るい何か。読みを深めれば、違う印象を持つのだろうか。
読了日:12月03日 著者:リルケ
百歳百歳
柴田トヨさんの詩は難しい言葉を使っていません。初めて見たもの、初めて気がついたものの驚きを歌っているのではないと思う。読む、というより、自分の奥深くから聞こえてくるような。外からではなくて、中からやってくる詩のような気がします。自分の中に折りたたまれていた思い、しまいこまれていた情景に、ああ、こんなのがあった・・・、としみじみと気づかせてくれる。
読了日:12月02日 著者:柴田トヨ
聖夜 ― School and Music聖夜 ― School and Music
葛藤する主人公の一人きりの主旋律に、天野をはじめとする仲間の音が絡まり、家族の音を巻き込み、美しい音楽になる。物語がクライマックスの直前で終わるのが好き。もうちょっとで最高になる、という一歩手前で終わるのが好き。この物語の日々は、リハーサルなんだ。でも、本番よりずっと大切なリハーサル。昨日のあれは、今日のためのリハーサル。今日は明日のリハーサル、明日はその先の・・・追いかけて追いかけて、高低長短・・・まるでフーガのようだ。
読了日:12月01日 著者:佐藤 多佳子

2011年12月の読書メーターまとめ詳細
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