ティナの明日

ティナの明日ティナの明日
アントニオ マルティネス=メンチェン
宇野和美 訳
あすなろ書房


成長するということは、喜ばしいものだろう。
苦さを伴いながらも、明るい方向に向かっている、という匂いがあるものだ、と思っています。
この物語は・・・こういう成長もあるのだ・・・


1940年代のスペインの地方都市。
フランコ将軍の独裁下。庶民は貧しく、奨学金を得なければ高校に進学することもできなかったそうです。
女性差別がまかり通った時代で、女の子は、どんなに優秀でも、義務教育で終わるのが普通だったそうです。


貧しさ、女であること、閉じられた社会の中の偏見や迷信・・・


ティナの閉塞感。
誇らしい宗教コンクールの優勝も、淡い恋心も、
むしろ、彼女の閉じられた世界を際立たせるだけになってしまったように思えて切なかったです。


けれども、ティナは強い。強くて柔らかい。
静かだけれど、内には意志の強さ、粘り強さ、勤勉さが宿っている。
そして、考え深さも持っている。優しさもある。
いつか・・・いつか、彼女か、彼女の子どもたちが、
もっと自由に夢を描き、その夢に向かって誰はばかることなく歩いていける、そんな日が来る。
こういう時代を乗り越えてきたたくさんのティナに、わたしたちは連なっているのだ。