『昆虫記(DAYS OF INSECTS)』  今森光彦

もしもし、ぱせりさん、あなたは今まで、昆虫の図鑑(あるいは写真集)に、「暖かい」とか「感動した」という感想を書く日が来るとおもいましたか?(自問)

小いちごに、何か良い昆虫図鑑を買ってやりたいなあと、ずっと思っていました。
この本は、写真集ですが、写真集以上のもの、図鑑以上のもの、と思っています。

写真家・今森光彦さんの自然を見る暖かくて、ウィットに富んだまなざしを感じます。

たとえば、ショウリョウバッタの長い触角。ひとつのページを9つに仕切って、バッタを正面から捕らえたアップが並びます。すべてのコマ割の中で、バッタは自由自在に触角を動かしている。左右の触角の角度がみんな違う、その写真一枚一枚の下に配されたコメント(?)は、「正午」「12時7分」「9時15分」・・・
ヒキガエルオカダンゴムシを食べる瞬間の連続写真。最後の飲み込んだ瞬間のカエルの表情が最高。ああ、ここにお見せしたい。「結構なお点前でした」とつぶやいてしまいました。
アブラゼミの羽化の連続写真30枚。繊細な白い羽が徐々に乾き、美しい模様が浮かび上がってくる。始まりはPM7:30。最後の一枚は(翌日)AM2:00。
冬はあちらこちらで冬越しする虫たち。イラガのまゆのこんなに多彩な模様に驚く。そして夏中栄華を誇った虫たちの死の姿。

春、ひょろっとした小さな植物の双葉の下で、地面からやっと頭を出したキリギリス。――誕生の瞬間。

昆虫の図鑑(または写真集)に、「暖かい」と思い、「感動した」と思うときもあるんです。