『アマゾン・アマゾン』 今森光彦


アマゾン川の支流、アラピオンス川の上流。
川の岸辺に建つジュワンの家は、後ろに深い森を従えた一軒家。
一番便利な交通手段は川をのぼりくだりする舟だ。
隣の家はここからどのくらいはなれているのだろう。森をはさんで・・・そもそも隣、といえるのだろうかな。
ジュワンは、妻と七人の子どもたちとここで、さかなをとったり畑をたがやしたりして、自給自足をして暮らしている。
10歳のサンドラを頭にした子どもたちは両親を良く手伝って働く。
みんなで助け合うのが当たり前だと思っている。そして、屈託なく笑う。


珍しい虫たち。巨大な昆虫たち。
ことに見ることさえ難しいといわれるファルキドンミイロタテハの写真は、撮影者の興奮と感動がそのまま伝わってくるようでどきどきする。
極彩色の羽に目を見張りながら、かけがえのない美しいものに出会った喜びのおすそ分けにあずかる。
珍しい植物たちと暮らす人々の知恵と工夫に驚く。毒のある植物から毒を抜いて食物にする方法、水分を豊富に湛えたツタから飲料水をとること。
森の営みと人の営みとが、まるで一つの生き物のように調和している。ひたすらに今を生きている。全部まとめてアマゾンなのだ。
突然にやってくるスコールをもたらす一面の黒い雲は、広い川の上で、雄大なドラマになる。
一日のおわり、夕日をあびながら夜まで子どもたちは川にとびこんであそぶ。
夕焼けのなか、水面に浮かび上がる子どもたちのシルエットを眩しく眺めつつ、
「ぼくは、こんな美しい、静かな、そして雄大な自然の中でそだっている子どもたちを見て、とてもうらやましく思いました」
との言葉に、うんうん、とうなずく。
でも、ほんとは少しばかり寂しい気持ちになっている。わたしには、ここでは暮らせない(そういう力がない)って思うから。
今の暮らしに不満はないけれど、本の中の人々のいきいきとした姿を眺めていると、取り返しのつかない忘れ物をしたような気持ちになる。