広大なとうもろこし畑に囲まれた田舎の家に引っ越してきた一家。その末っ子、来年学校へ行くことになっている少年レイの日々。 さまざまな動植物や孤独な老夫婦との出会い、とりわけ、丘の上の馬に寄せる思い…。 夏の日のとうもろこし畑で、ひとりで遊ぶレイを見ているのはさびしかった。 馬との秘密の日々は輝かしかったが、やはりこれもさびしく感じてしまった。 レイは、家族の中で孤独に思えたから。 自分を愛してくれる人に囲まれ、じぶんも間違いなく相手を愛しているのに、孤独だと感じるときがあると思う。 愛する人たちに、自分が正当な評価をされていないと感じるとき。 自分は確かに一人前なのに、周りの人々に、半人前で守らなければならない存在だと思われているとき。 雨の中、一人で馬を連れて(乗って)戻ってきたレイの誇らしげだったこと。そして、もっと良いことが…。 レイの孤独が取り払われて、正当な評価のもとに家族に迎えられたように思い、うれしかった。 「丘が踊っている」という表現の美しかったこと。(表題の「丘はうたう」は聖書の中の一節だそうだ。) 穏やかで暖かな感動につつまれる。 人の話し声や行動よりも、なんだか、とうもろこしが風にゆれる音や日の照る音(もしあるなら)のほうが大きく聞こえるような気がする。 静かな本だと思った。 |