9月の読書

9月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:3643

日曜の夜は出たくない【新版】 (創元推理文庫)日曜の夜は出たくない【新版】 (創元推理文庫)感想
七つの物語は、どれもほのぼのとしたイメージだ。なぜだろうね、殺人事件なのに。探偵をはじめとして、そこにいる関係者たちの人柄によるものだろうか。付録のような、巻末の二つの短い物語(なのか、エッセイなのか、あるいはあとがき?)で、この作品集のもう一つ(もう二つ?)の顔を知った。最後の最後まで楽しませてもらった。
読了日:09月28日 著者:倉知 淳
惨憺たる光 (Woman's Best 9 韓国女性文学シリーズ6)惨憺たる光 (Woman's Best 9 韓国女性文学シリーズ6)感想
薄闇のなかに、何か安心に近い心地がある。おためごかしの明るさが何になるか、と、いっそ開き直る清々しさとでも言おうか。薄闇には、暗さのグラデーションがある。ときには、ほとんど光といっていいくらいの薄明かりのようなものにも出会い、はっとする。美しい、と思う。
読了日:09月24日 著者:ペク・スリン
子どもと本 (岩波新書)子どもと本 (岩波新書)感想
この本の中には、「本は良いものであると信じる人々」が沢山出てくるし、そういう人々に助けられながら、本と出会い、本と戯れているかのような子どもたちも出てくる。そうした人々、そうした子らのエピソードを読んでいると胸が熱くなる。わが子との、本を間に挟んでの日々がいろいろ甦ってもきた。本はほんとうに良いものだ。
読了日:09月23日 著者:松岡 享子
臆病者と呼ばれても―良心的兵役拒否者たちの戦い臆病者と呼ばれても―良心的兵役拒否者たちの戦い感想
恐ろしいのは、イギリスが徴兵制の下、国民をだましだまし戦場に追い込んでいく巧な手順。「いつ、いかなるときも人殺しは罪である」という信念を持った17人の良心的兵役拒否者たちがどんなにおそろしい運命を辿らされたか。巻末の訳者あとがきでは、「そこまでして、そういう人々が守りたかったものはなんなのだろう」と問いかける。
読了日:09月21日 著者:マーカス セジウィック
すいかのプールすいかのプール感想
夏のすいかは、汁気たっぶり、食べておいしいけど、見ているだけでも、ひんやりと気持ちがいい。でも、すいかがプールになったら、なんて考えたこともなかった。すいかのプールにとびこんだときには「しゃぽん」と音がする。表面を走ることもできてしまう。色もきれいだ。
読了日:09月19日 著者:アンニョン・タル
鬼殺し(下) (エクス・リブリス)鬼殺し(下) (エクス・リブリス)感想
まるで、パが生きたまま鬼(幽霊)になってしまったような下巻。「甘耀明は本書のテーマは何かと問われて、「身分の揺らぎ」だと答えている」と、訳者あとがきに書かれている。痛ましい、残酷な、という言葉が似合う逸話のほうが多いのに、おおらかな明るさがある。台湾が大勢の人間を乗せてうねっている印象だ。
読了日:09月17日 著者:甘耀明
鬼殺し(上) (EXLIBRIS)鬼殺し(上) (EXLIBRIS)感想
日本の植民地だった台湾で、志願して(天皇の赤子として)特攻に向かおうとするひたむきな青年たちの英雄ぶりにたまらない気持ちになる。とはいえ、何という物語だろう。確かに神話。悲劇さえもおおらかで、英雄や鬼(幽霊)たち、奇跡が踊っている。舞台となった架空の町の美しい描写も心に残る。(下巻へ)
読了日:09月17日 著者:甘耀明
水曜日の凱歌 (新潮文庫)水曜日の凱歌 (新潮文庫)感想
「戦争なんかするからだ」「懲り懲り」だし、「ずるい」し、でも、人々は、自分の足場を懸命にさがして生きていこうとしている。その姿は、ときにしたたかで、逞しい。底辺をさ迷う女たちに物語は寄り添う。いやいや、寄り添うのではない。このままではすまないぞ、みてろ、と、同志として、声をあげる。啖呵を切る。
読了日:09月14日 著者:乃南 アサ
僕のワンダフル・ジャーニー (新潮文庫)僕のワンダフル・ジャーニー (新潮文庫)感想
人は変わっていく。(変わることができる) でも、犬は、最初から最後まで変わらない。四回生まれ変わり、外側の姿はすっかり変わってしまうのに、その愛は決して変わらない。目的は常にCJを守ること。CJのそばにいること。ただまっすぐに、たった一人の「私の少女」を全身で全力で愛し続ける。その姿に打たれる。
読了日:09月10日 著者:W.ブルース キャメロン
ソルビム〈2〉お正月の晴れ着(男の子編)ソルビム〈2〉お正月の晴れ着(男の子編)感想
男の子編の最後では、父母祖父母とともに、子どもたちも正装で揃います。色も柄も割合すっきりとした大人の衣装に比べると、子どもたちの晴れ着の、色も柄も華やかでかわいらしいこと。(模様は伝統的なものだろうか、何が描かれているのだろうと、目を凝らしてしまう。)
読了日:09月09日 著者:ペ ヒョンジュ
ソルビム―お正月の晴れ着ソルビム―お正月の晴れ着感想
お正月の朝、起き出した子どもは、晴れ着に着替えていきます。ほおー、これはこうなっているの、こうして身に付けるのと、着付けの過程に興味津々。ひとつ衣類をかさねるたびに満足そうに笑みながらポーズする子どもの表情がいいなあ。わたしも、自分が子どもだった頃のお正月の朝の匂いなどを思い出しています。
読了日:09月09日 著者:ペ ヒョンジュ
おどりトラ―韓国・朝鮮の昔話 (こどものとも世界昔ばなしの旅)おどりトラ―韓国・朝鮮の昔話 (こどものとも世界昔ばなしの旅)感想
このイカレタ顔のトラが好き。ゆるやかに、おおらかに、次の展開はどうなるのかな、とワクワクしながらページをめくる。おどるってすてき。困ったことがおこったとしても、なんとかなるさ。ウルロォーン、ウルロォーン。と、トラは吠えるのです。お囃子みたいで、楽しいな。
読了日:09月07日 著者:金森 襄作
キオスク (はじめて出逢う世界のおはなし オーストリア編)キオスク (はじめて出逢う世界のおはなし オーストリア編)感想
物を考えるということ、普通に善良であること、誠実に生きようとすることは、命までも脅かしかねないウィーンの町での、少年の成長は、不器用で、少しおかしくて、痛くて苦しい。「生きた証を残すには、かなりの勇気か愚かさ、あるいはそのすべてが必要だ」との言葉が心に残る。
読了日:09月06日 著者:ローベルト ゼーターラー
ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集 (福音館創作童話シリーズ)ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集 (福音館創作童話シリーズ)感想
「ぼく」と「きみ」が詩を読む。「きみ」は「ちょっかんてきにわかってる」という「ぼく」の言葉が好きだ。「詩」ってなんだろう。いろいろな答え(の一部)が書かれている。私は「くりかえし」や「ほんとうのこと」について語った言葉、そして、最後に贈られた(確かに贈られたような気がしたのだ)詩を大切に覚えていたいと思う。
読了日:09月04日 著者:斉藤 倫

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