- 作者: ジョーン・エイキン,クェンティン・ブレイク,こだまともこ
- 出版社/メーカー: 冨山房
- 発売日: 2012/12/27
- メディア: 単行本
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おとぎ話が他の物語と違うのは、いろいろなことがぼんやりしているところかもしれない。
場所はどこだかわからない遠い国。時は、いつだかわからないむかしむかし。
そして、お話はいきなり始まるけれど、それが「なぜ」そうなのかわからないことが多いのです。
このいい塩梅のぼんやり加減が、何度も何度も聞きたい、と思わせるのかもしれない。
エイキンの「おとぎ話」もいろいろな「なぜ」がわからないままです。
たとえば、お妃さまはなぜいなくなってしまったのだろう。魔女はなぜここに現れたのだろう。なぜ馬の脚は八本なんだろう。
短い八つのお話の外に、沢山の物語が広がっています。
魔法もあるし、魔女もいる。王子様にお姫様。不思議な靴や魔法のほうき。海の王さま、謎の旅人、姿の変わる人間。意味深長な歌の言葉。
それから、現代のおとぎ話らしく、パトカーも電話も出てくるし、火星からきた怪獣なんかも登場するのです。
そして、一言で「おとぎ話」とは言うけれど、八つのお話、ひとつとして似たお話はない。
読後に、ほっとするのや楽しくなるの、しみじみと切なさがわいてくるの、それから怖いの、不安になるの。
一番好きなのは「メリュシーナ」
なんともかわいらしいお話です。前向きなかわいい赤い蛇が素敵なのです。最後の王さまのセリフも決まっていました。ウンゲラーの絵本『へびのクリクター』を思いだしました。
一番こわかったのは『怒り山』
怪獣よりも悪い魔女よりも、普通の人の集団が怖かったです。実際、何が起こっているのか解らないことも怖い。わからないまま無責任な集団になってしまうことが怖い。後味の苦い物語でした。