大きな古時計の謎

大きな古時計の謎

大きな古時計の謎


大人になっても懐かしく思いだしたり、ときどき知らずにくちずさんでいたりする、子どものころに覚えた歌。
懐かしい、と思うのは、子どもの頃の幸せな思い出と繋がっているからかもしれない。
そして歌詞は、たいていわかりやすくて、少し漠然としているかも。
だから、だれもが、自分の気持ちや自分の知っている場面を思い浮かべられるのだろう。
何度も何度も、何十年も、聞いたり歌ったりしていたのに、どうしてその詩が生まれたのか、ということを知ろうともしなかった。
そもそも意味があって作られた、なんて考えてもみなかった。
でも、あったんだね。 


この本でとりあげられたのは、おもに外国から入ってきた曲。
大きな古時計」「ロンドン橋」「線路はつづくよ」「ごんべさんのあかちゃん」・・・などなど。
ことに驚いたのは「ドナドナ」が生まれた背景と歌詞の意味。
この歌の原詞はイディシュ語だった、と知れば、おおよその事情はわかってくるのですが・・・


ほとんどが童謡だから、楽しげに歌われることが多い。遊びながら歌う歌も。
そういう歌の大半(全部じゃないけど)が、悲劇のなかから生まれていることにも驚いてしまいます。
うれしいから歌うのではなくて、辛くてやり場のない思いを、別のものに託して歌っているような・・・


歌詞の意味を知って、歌への気持ちも少し改まったりもするのですが、務めてそっとしておきたいと思う。
ただしみじみと心にしまっておこう。
そして、子ども(目の前にいる子ども・思い出の中の幻の子ども)といっしょに歌う。
歌いながら、新しい物語を縫いこんでいく。いろいろな思いを、情景をたしていく。
そうやって、歌は自分のなかで豊かになっていくような気がする。