あれから (俵万智3・11短歌集)

あれから―俵万智3・11短歌集

あれから―俵万智3・11短歌集


昨年のあの日、俵万智さんは、子どもを連れて、仙台からひたすらに西を目指した。
「一行」と「一行」の連なりを読みながら、一年間を振り返っていました。
一年前、半年前、三か月前・・・すごく昔のことのようであり、つい今しがたのようでもある。
あの日やあの日やあの日の私自身のいろいろなことも思いだしている。


間違っても愉快な一年ではなかった、
不安定、不安で苦しい一年だった。
母の思いを謳った歌は、思い当たることばかり、共感できることばかり。
だけど、一番心に残ったのは、そういう歌ではありませんでした。
無我夢中になって遊ぶ子ども、無邪気な子どもの言葉や表情、
瞬間の子どものきらきらを謳った詩が、ことさらにまぶしく、印象的でした。


非日常で切羽詰まった時間に、どうして普通でいられるだろう。
子のために母はなりふり構わずにただ動く。
でも、その母を力づけ、動かすのは、きっとなんということもない子どもの姿なんだ。
子どもが喜びをもってきてくれた。子どもが日常を連れてきてくれた。
そんなふうに思った。
子どもを生かしているつもりの大人が、子どもに生かされているのかもしれない。