- 作者: トーベ・ヤンソン,Tove Jansson,山室静
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1990/10/22
- メディア: 単行本
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ムーミン谷の短編集です。
長編のムーミンもよいですが、短編のムーミンもよかったです。
それぞれに楽しく読める物語ですが、深い意味がたくさん籠められているようで、
読み返すたびに、見えてくる世界がきっと違うのではないか、と思っています。
不可思議な『ニョロニョロのひみつ』
ムーミンパパは旅の途上、小さな無人島でニョロニョロと過ごします。
ニョロニョロと理解し合いたい、とあれこれやってみますが、ニョロニョロはニョロニョロ、ムーミンはムーミンなのだ、とわかっただけでした。
互いの性質の違いを越えて仲良くやっていきたいのに(やっていけると信じていたのに)
それができないとわかったら、がっかりするのではないかと思うのですが、
むしろ、そのことを受け入れることで何かが吹っ切れたり、自分は自分という気づきに繋がっていくのが新鮮でした。
そういえば『世界の終わりにおびえるフィリフヨンカ』が、のびのびと開放感を感じるのは、何もかも失ったときだし、
『スニフとセドリックのこと』だって、そういう感じなのですよね。
『しずかなのがすきなヘムレンさん』や『春のしらべ』だって、思い通りにならない事を知って、開き直った時(?)がハッピーエンドの入口だったし。
幸せの形って、見た目ではわからないもの。流されるつもりはなくても、集団のなかでいつのまにか、自分を見失っていることもあるのかもしれません。
自分が何を望んでいるのか、どういう状態を幸せだと思っているのか、ほんとうにわかっているのかどうか、確かめなくちゃ、と思います。
この本の最後を飾るのが、『モミの木』
クリスマスを知らない者同士のクリスマスは、誰かの『福笑い』を横から眺めているみたいで、可笑しくて仕方がないのだけれど、
ささやかな冬の集いの美しさにため息をついてしまいます。
その集いのなかに確かにクリスマスの心があるような気がします。
ムーミン一家の、来る人を拒まない受け入れの広さと温かさ・・・彼らの存在そのものがまるごとクリスマスなのかもしれません。
そういう言葉を知っていても知らなくても。
今年は(ほぼ10か月先だけど)クリスマスにもう一度この物語を読みたいな。